第37話 別れ
エストがウリ坊を抱っこしたまま駆け寄ってくる。
「もう! 探したわよ!」
「フレンに病院行ってるって言ったと思うけど」
「フレンに居場所を聞くまで探したって言ってるのよ!」
ああもう、うるさいな。
フレンはソフィアさんをエルフのお姉さんに診てもらっている。暇つぶしにエストと話していようか。
「さっきはありがとね。エストが来なかった死んでたかも」
ソフィアさんが血を吐きながらしてきた魔法。あれは強力なものだった。今思い出しても、よく生き残ったなぁって思う。
「当たり前でしょ! ライバルで……仲間なんだから」
エストがもじもじしている。可愛い。
「ウリ坊は大丈夫?」
「え? ああ、ウリ坊ね。ゾンビ化していた猪がこの子の母親だったみたいでね。とても落ち込んでいるわ」
エストがウリ坊を撫でると、ウリ坊は「プヒー」と鳴いている。可愛い。
なんか、さっきまで戦闘をしていたからか、すごく和んじゃうね。
「じゃあ、ウリ坊は独りぼっちなの?」
「そうね。だから、大きくなるまでは世話をしてあげようと思うのだけど……」
そんな不安そうな顔をしなくても反対なんてしないのに。
「いいね。エストに任せた」
「いいの! 良かったわね!」
「プヒー!」
すっかり仲良しだね。初対面の時から仲良しだった気がするけど。
🌙
今度はフレンが寄ってきた。
「ソフィアさんのところにいなくていいの?」
「少し話したことがあってね」
なんかあったっけ?
「三つくらいあるんだが、いいかい?」
え、そんなにあるんだ。
「いいよ。全部聞くよ」
「ありがとう。まずは、ソフィアを助けてくれたこと、今日まで一緒に旅をしてくれたこと、本当にありがとう。何度お礼を言っても足りないよ」
「お礼は私も言いたいと思ってた。本当に楽しい旅だったよ。ありがとう」
やっぱり、フレンとの旅はお終いなんだね……
「話したいことの一つ目だが、もうしばらくソフィアは安静にしないと駄目なんだ。だから、僕はソフィアの傍にいようと思う。ごめん」
「いいよ。なんとなくわかってたから」
もしフレンが「これからも一緒に旅をしよう」なんて言ったら止めるつもりだった。一番大切な人が弱っているときに、そんなことはさせられない。
「二つ目は、ルナも気になっていたと思うが、僕は光魔法を使ったんだ。ソフィアとの戦いで、僕が光り輝いていたあれなんだが、なんて言ったらいいのか……実は僕もよくわかってなくて……」
「ああ、それもなんとなくわかってるからいいよ。私のピンチに覚醒してくれたんでしょ? さすがロリ……私のヒーローだね」
危ない。またロリコンって言うところだった。
「ヒーローだなんて……褒めすぎだよ」
なんか嬉しそう。
「それよりも三つめは?」
「僕の髪の色を覚えていなかったことなんだが」
ああ、そのことか。
「ソフィアが記憶に制限とか言っていた。もしかしてルナは記憶に障害があるとか、病気だったりするのかい? だとしたら、気が付くことができなくてごめん!」
「ああ、病気じゃないよ。呪い魔法を使うと命が削れるんだ。でも、命だけじゃなくて体も少しずつ悪くなっていく。記憶とか、頭に関係のあるモノは、一番影響を受けやすいってだけ」
だから、ソフィアさんがフレンの知っているソフィアさんのままか不安だよ。呪いに耐性がないのに、何度も呪い魔法を使わされちゃった。
「フレンさん。こちらへ」
エルフのお姉さんがフレンを呼びに来た。フレンは「行ってくる」と言って、エルフのお姉さんについていく。
なんだかお腹が空いてきたな。
🌙
おいしそうな物を探して、エルフの里をぶらぶらと歩きまわっている。勝手についてきたエストとウリ坊が後ろでイチャイチャしている。
しばらく歩いていると疲れてきたから、適当にお店を選んで、適当に注文した。
「ルナ」
エストが睨んできた。何で怒ってるの。
「どうしたの?」
「私ね。もう少しエルフの里にいようと思うの」
ん? どういうことだろう。
「病院にいるエルフのお医者さんは、私と同等の魔法を完璧にコントロールできていた。私は、あのエルフに弟子入りしようと思う」
なるほどね。いいんじゃないかな。
「今のままじゃルナとフレンの足手まといになる。今のままじゃ嫌なの。私も一緒に戦えるようになりたい。だから、私がもっと強くなってから、ルナに会いに行ってもいい?」
「いいよ」
エストが決めたことなら、私はそれを応援する。一緒にいるだけが仲間じゃないと思うし。
「強くなったら、フレンとソフィアを引っ張って、必ず会いに行くから!」
「分かったから立たないで。お店から追い出されるよ」
フレンもエストもエルフの里に残ることになるのか。寂しくなるな。
「そして、今度こそルナを倒す!」
「わかったわかった」
私も負けないように頑張ってないと。
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