第14話 傭兵ギルド

 傭兵ギルドというのは一種類ではないらしい。何と言えばいいのかな。町の周りで活動する町の平和を守るための『モリモリ』というギルドとか、遺跡とかでお宝を探す『レジェンド』というギルドとかあるらしい。『モリモリ』は名前の通りみんな筋肉がすごいんだって。

「ルナ。何を書いているんだい?」

「先生のメモ帳にフレンから聞いたことを書いているんだよ。ギルドのことは書いていなかったからね」

 フレンの所属しているギルドは『キングダム』っていうギルド。かなり規模が大きくて、トップの人たちくらいしか名前を知ってる人はいないみたい。『キングダム』には簡単には入れて、特に決まりもないからフレンは入ったらしい。

「どうやらここが、この町の傭兵ギルドみたいだね」

 傭兵ギルドと呼ばれる場所は、傭兵が任務を受けるための場所のこと。ここで任務を受けて、任務をこなすことができればお金を貰える。

「よし、書けた」

 これだけ書いておけば先生も満足してくれるでしょ。


🌙


 傭兵ギルドには数人しかいなかった。だからあの子の姿はとても目立っていた。

 さっきフレンをこちょこちょしようとしたときに部屋に入ってきた魔女。大きな杖で背中を掻いている。女の子がおじいさんみたいなことしないの。

「あ、さっきの」

 魔女も私に気付いて近寄ってきた。フレンは布団に籠ってたから初対面だと思う。

「確かルナと言ったかしら? さっきはお楽しみの邪魔して悪かったわね」

「いいよ。ちゃんと楽しめたし」

「楽しめたですって! 子どものくせにこんな時間から何してるのよ! 変態!」

 なんで叫んでるんだろ。あと、魔女のコスプレしているような女の子に変態とか言われたくないし、同じ子どもに子どものくせにとか言われたくない。私は中身は大人だからいちいち怒ったりしないけど。

「そういえば名前は?」

 怒る代わりに名前を聞いておいた。コスプレ魔女の名前なんて知りたくないけど。

「私は賢者エストよ。賢者様と呼ぶことを許可するわ」

 ……そうですか。

「ねえフレン。任務ってどうやって受けられるの?」

「あそこにたくさん紙が貼りつけれているだろう? 紙に任務の内容が書いてあるから、まずはどれを受けるか選ぶんだ。選んだ任務を受け付けの人に話して、それで受けたことになるよ」

 なるほどね。今はちょうど人がいないから、紙に近づいて簡単に読んでみた。薬草集めとか魔物退治とかある。いろいろあるんだね。夕方まで終わりそうなのあるかな。

 うわ、突然目の前にエストが来て紙を見えないようにしてきた。

「意地悪やめて」

「ルナが無視をするからでしょう!」

 なんか私って毎日叫ばれてる気がする。


🌙


 エストをどけて紙を見る。

「ねえ、王カマキリってなに?」

 任務の一つに『王カマキリが見つかったから討伐してくれ』っていうのがある。村を出て最初に見たカマキリのことかな。

「大カマキリのボスだね。大カマキリはルナの暮らしていた村を出て最初に倒した魔物だよ」

 あれのボスってことは相当強そう。この任務は駄目だね。

「ルナは王カマキリも倒せないのかしら? その程度の実力で私を無視するなんて、身の程をわきまえなさい!」

 賢者様は元気ですねー。遊んでほしいのかな? うるさいけど早く任務を選ばないといけないから無視。『破壊された森の調査』は嫌な予感がするから駄目。『ドラゴンをペットにしたい』も駄目。『賢者エスト、仲間募集中』は無視。なかなか良いの見つからないな。

「ねえフレン。良いのある?」

「タイミングが悪いのか、危険度の高い任務が多いね。『大カマキリの鎌十本』も王カマキリの任務見てからだと危険そうで受けられない」

 うーん、どうしよう。せっかくだから一つくらいは任務受けたかったけど、これじゃあ諦めるしかないかな。

「お二人とも気づいていないのかしら? ここに『賢者エスト、仲間募集中』という任務がありますわ。賢者がいれば王カマキリだろうと何だろうとぼこぼこにできますわよ」

「話が長い。十文字以内じゃないと耳に入ってこないよ」

「私を仲間にしてください!」

 十文字以内じゃないじゃん。残念だけど耳に入ってこなかったね。


🌙


 さっきからエストが鬱陶しい。年齢が近い女の子はキャラ被りするからどっか行ってほしい。

「どうして仲間にしてくれないのよ! こんなにお願いしているのに!」

「これ以上子どもが増えると、フレンのロリコン度が上限まで上がっちゃうからだよ」

「本当にロリコンは勘弁してくれ……」

 私もさすがにロリコンロリコン言うの飽きてきたから、あんまり言いたくなかったんだけど、咄嗟に思いついた理由がこれだったから仕方がない。

「意味が分からないわ! 私は子どもじゃない。もう大人よ!」

「大人ならピーピー騒がないでよ。周りの人迷惑してるよ」

「ピーピー騒いでないもん!」

 はあ、どうしたものかな。簡単に諦めてくれそうにないから、このままだと嫌々仲間にすることになりそう。

「じゃあ、こういうのはどうかな?」

 お、もしかしてフレンに名案が?

「本当にエストちゃんが賢者と呼ばれるくらいの実力があるのか見せてもらう。もし僕かルナが実力があると判断したら、この後に受ける任務を一緒にやろう。でも、無いと判断したら諦めてもらうよ」

「この私を試そうなんて生意気ね。でも乗ってあげるわ。驚いて目玉が飛び出ても知らないわよ?」

 ……時間が勿体ないなぁ。

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