27. 美羽の誕生日
吾輩は真弦と一緒に美羽の家に行く事になった。
今日は美羽の誕生日だからリビングのテーブルにごちそうが出ている。
「美羽、誕生日おめでとう!」
先日退院してきた礼二がリビングのお誕生日席の一人掛けソファーに座っていて、イケメン面で美羽に膝に座るよう両手で手招きしている。
「お兄ちゃん、今日はそこわたしの席だよ……」
「さあ、お兄ちゃんの膝に座ってお前の誕生日を盛大に祝おう」
病み上がりの筈の礼二は妙に元気でキラキラしている。
その姿にイラッとした真弦がクラッカーを持ち出して来て、礼二の耳元でパンッと鳴らした。
弾け飛ぶ紙吹雪と一緒に音に驚いた礼二が横に仰け反ってソファーから転げ落ちる。
「美羽、席開いたよ」
「ありがとう真弦!」
美羽は真弦に席を勧められてスマートに座った。
このやり取りは日常茶飯事なので、ソファーで座ってごちそうがテーブルに並ぶのを待っている牛山父は驚いていない。
今日はローストチキンをメインにトマトスープとパプリカのサラダ、いろんな具を載せたクラッカーのオードブルとほうれん草と人参のラビオリがテーブルに上がっていた。牛山母は外国人なので、味付けは真弦曰く大雑把な西洋風らしい。吾輩はチキンとクラッカーをご馳走になった。
この誕生日会一番の目玉はやっぱりケーキだろう。
フルーツのたくさん載ったタルトに『美羽ちゃんお誕生日おめでとう』というチョコプレートが乗っていた。今日で17歳か。ちなみに、話題には出してないが真弦は先月誕生日を迎えている(特に面白くも何ともなかったから日記を端折った)。
デザートのケーキを食べ終わると、それぞれが美羽に誕生日プレゼントを渡し始めた。
牛山父からはピアノのチャームが付いたネックレス、牛山母からは水玉柄のバニティーケースを受け取っている。真弦からはコスモスのフラワーアレンジメント。
吾輩は公園で見つけたブドウの絵が付いた瓶の王冠をあげた。
「わあ、ありがとう!」
美羽は素直に喜んでいる。
そして礼二から美羽への誕生日プレゼントはというと……。
「待ってろ美羽、今お兄ちゃんがお前の姿を……」
突如バナナ芸を始めている。
彫刻刀で器用にバナナを削り、何やら人間の形を掘っている。
美羽は黙って兄が彫刻刀をふるう姿を見ていたが、隣で真弦がイライラしている。ついでに牛山母も。
しばらく時間が経過しても礼二のバナナ彫刻は完成しない。多分、バナナで美羽を表現しようとしているのだろう……。
「部屋に行ってくつろごうよ」
「……うん」
真弦は美羽の手を引いて美羽の部屋がある二階に上がってしまう。
牛山母は牛山父に手伝って貰って食器を片付けていた。
リビングにはバナナを使って彫刻に集中する礼二だけが取り残されていた。
礼二が美羽の裸を模したバナナ彫刻は確かに神々しかった。
「ほらっ、美羽! 完成したぞ!」
礼二が顔を上げると、リビングには猫の吾輩以外誰もいなくなっていた。
しーんと静まり返る空間。奥の台所で牛山母が食器を洗う音だけが聞こえていた。
「うわああ、美羽! なんでいないんだぁ?」
兄は妹を模したバナナを持って涙を流しながら叫んでいた。
風呂に入ろうと通りすがった牛山父が着替えを持って礼二を見る。
「礼二、凄いなそのバナナ! よく出来てるぞ」
父は頑張った礼二の頭を撫でようとするが、礼二に凄い形相をされて跳ね除けられた。 確かに礼二のバナナ彫刻の腕は神と称賛しても良いレベルだろう。バナナで模した美羽が艶やかで彩色のされていない美少女フィギュアにも見える。
「美羽! 美羽! どこ行ったー?」
礼二は美羽を模したバナナ彫刻を持ちながら二階へと駆けて行った。
「……礼二」
跳ね除けられた父親は物凄い寂しい表情をしていた。
彫刻バナナのプレゼントを持って行ったのにも拘らず美羽の部屋から閉め出された礼二は、精神病院に入院してもやっぱり性格が改善された様子はなかった。
東大を目指していた筈の礼二だが、彼の部屋には大学受験グッズが一切見当たらなくなっていた。代わりに『病気平癒』のお守りと『精神統一』という牛山父が書いただろう半紙と阿弥陀如来のポスターが壁に貼ってあった。
美羽の話だと、礼二は精神科のリハビリ施設に平日は毎日通っているらしい。
礼二は床に穴を開けていたのか、ベッドをずらして穴の中に入った。
おっと、吾輩も気になるから付いて行こうじゃないか。
『……あははは……』
丁度美羽の部屋の真下あたりで美羽の笑い声みたいのが聞こえてきた。
屈んでいる礼二は壁に突き当たると、腕を伸ばしてごそごそやり始め、美羽の部屋の床をずらした。丁度美羽の学習机の足を置く部分に穴を開けて中の様子をこっそり覗けるようにしていたみたいだ。部屋の主が細心の注意を払わないと結構見落としてしまう死角の位置である。礼二はこういう悪知恵だけは働く。無駄に頭が良い!
頼むから違う事に頭使って東大にでも合格しろよと言いたいが、親が散々言い聞かせても無駄なので無理なのだろう。
礼二が覗く部屋の中で、美羽は雑誌を片手に真弦と話し込んでいた。
真弦の制服のスカートに包まれたでかい尻がここからだとよく見えますね……。
美羽はキューティーンという雑誌を見て目を輝かせてキャッキャウフフしている。
「この服ってこの前真弦から貰った服だよ。モデルさんが着ると違うよね」
「……そうなの?」
真弦は特に興味なさそうで異様にそわそわしている。
「読モの雪華ちゃん可愛い~♪ ブリティッシュパンクにロングヘアーも良いな~」
「ふーん」
「わたしも癖毛じゃなかったらここまで伸ばしてても良かったんだけどな」
「そうか? 私はその髪型が美羽には一番似合ってると思うよ。翼のモデルだししばらく変えて欲しくないな」
真弦は『お兄ちゃんは同級生』というオリジナル漫画のキャラクターメイクを暇がある時に頑張ってノートに溜めているのだ。主人公はお兄ちゃんではなく、あくまでも弟の『美空翼』なのだ。今も安い大学ノートに美羽を男体化したスケッチをしている。
「真弦、ここまで表情変化描き分けるなんて凄いね。わーなんか恥ずかしいなぁ」
「そうかな? 美羽は主人公のモデルだからこれ位無いとさ。喜怒哀楽がはっきりしてて美羽が一番描きやすいし楽しいよ」
吾輩達のアングルからではよく見えないが、真弦は美羽にイケメンチックにほほ笑んでいるのだと思う。美羽はポッと顔を赤らめて恥ずかしそうに真弦を見つめている。
「ねえ、快楽に喘ぐ表情も欲しいんだけど、良い?」
やっぱり来たぞその言葉ぁぁぁ!
礼二の肩に乗っている吾輩が礼二の顔見ると、礼二は血の涙を流して美羽の部屋の床を強く掴んでいた。
しばらく美羽の室内では「ハァハァ」という二人の少女の呼吸が響いていた。
「美羽、可愛いよ……」
真弦は光矢に見せるいつもの女の顔と違い、百合のイケメンの表情で美羽をベッドに押し倒して迫っていた。
「真弦……来て!」
美羽は真弦に仕込まれたレズなので当然ながら拒みはしない。肌蹴た小ぶりの胸を晒しながら真弦を受け入れようと誘っている。
誘われた真弦は当然の事、自分の服とブラジャーを脱ぎ捨てて美羽を丸裸に脱がしにかかる。
「んんっ」
「はぁはぁ……」
真弦と美羽は背景にキラキラと星を瞬かせながら二人の世界に入り込んで何度もちゅっちゅとディープキスを繰り返している。
時折離れる唇から涎の糸が引いて艶めいていた。
インターネットの掲示板でよく「百合の画像くれ」って騒いでいる輩がいるが、その画像よりも何百倍もエロい。だってライブだもの! 生の光景だもの!
「みう……みううううう……天上院真弦コロス……コロス……コロス……」
巨乳に組み敷かれている小柄な美羽の兄の礼二がおっぱじめている二人に聞こえないように掠れた声で呪詛を呟いている。
牛山礼二に真弦を殺しに行ける度胸はなさそうなので、吾輩はこいつが見つかるまでそのまま見守る事にしよう。
真弦は美羽のちっぱいに自分のたわわな胸をくっつけて絶妙な感触を楽しんでいるようだ。
「はあっ……真弦の胸ってフカフカで気持ちい……」
美羽は真弦の胸に触ってうっとりしながら頬を染めている。
女同士のベクトルが湾曲した恋愛は未だ留まる事を知らず、真弦は頬を染めながら真剣な表情で美羽の表情を観察している。
「やん、あんまり見ないで……」
「美羽は可愛いなぁ……デュフフ……」
おい、真弦が気持ち悪いオタクの声上げたぞ。恋から醒めろよ美羽!
だが、胸の大きな美少女に恋する美羽は全く醒めた様子もなく、自分の乳首と真弦の乳首を擦り合わせて息を荒らげている。
「あっ……美羽ぅ……大胆だなぁ……」
「はあはあ、真弦、気持ちいい?」
女同士なのでさすが、気持ちの良いポイントはお互いに知っている。
真弦が美羽のスカートの中をまさぐり始める。
「はうっ……んんっあうっ!」
美羽が弱いポイントをいきなり触られたみたいで、ピクッと身を強張らせた。
そのまま真弦はクチュクチュと水音をわざとらしく鳴らしながら美羽の花芯を刺激していく。
「ね、美羽、どうなってるか分かる?」
「……んう、クリちゃんが真弦の指でグリグリされてるのぉ……ああっ!」
美羽は恥ずかしげもなく真弦に素直に答えていた。
うちのご主人様はいたいけな妹キャラの牛山美羽を完全にエロく調教しちゃったみたいです!
美羽は未だ胸の大きな真弦に組み敷かれて喘ぎ声を上げている。声を誤魔化す為に女性ポップアーティストのBGMを大音量で流しているが、至近距離で聞いている吾輩と礼二には全く効果が無い。
真弦は鞄から愛用の媚薬入りローションを取り出すと、指に塗り付ける。真弦は下はまだスカートのままだ。
丸裸の美羽は真弦に簡単に股を広げ、秘部を見せている。
学習机の下から覗いているからあまりよく見えないが、美羽の大切な部分は兄の礼二が鬼気迫る顔でしっかり凝視していた。礼二の股間はギンギンにそそり勃っている。
「やっぱり恥ずかしいなぁ、こんな恰好」
「何を言ってるんだ。挿入までゆっくり時間をかけないと駄目なんだから我慢してよ」
え……!?
美羽の処女は真弦さんが張り型などを使って奪ってないのか?
真弦は美羽の尻穴にたっぷりとローションを塗り付けて焦らすように愛撫している。
「指入ったよ」
「……ん、やああ……」
美羽はかぁぁっと顔と耳を真っ赤にしながら首を横に振り続けている。
もしかして、こいつらは女同士でアナルセックスをやろうとしているのか?
もしかして、吾輩の推測が間違わなければだが、真弦はBLのセックスのやり方を恋人を使って試そうとしていないか?
真弦よ、何故お前の間男の、しかも本物の男のアナルを使って試そうとしないんだ?
意味が解らないが、それは多分、同棲相手の光矢の性癖が許してくれないのだと思う。あの男、美羽と違ってM系じゃないしな。
クチクチと指が孔を出入りする卑猥な音がこっちまで響いてきそうな妙な臨場感がある。
ポップアーティストが安っぽい愛の歌をスピーカーから垂れ流しているが、そんなもんはどうでも良い。女同士の愛が止まらないみたいだ。
「あんっ。ああん! まつるぅ……」
真弦の指は現在2本入っているようで、2本を交互に動かしているようだ。
ところで、美羽さん美羽さん……アナルって気持ちいのか?
「あっあっああーっ!」
既に真弦によって開発が始められていたので気持ちよさそうだ。
美羽が喘ぎ狂う姿を、机の下で押し黙りながら兄の礼二が震えながら覗いている。
礼二の呼吸は荒い。
「美羽……美しいよ……はぁはぁ……」
暗闇でよくわからないが、微かに栗の花の臭いがする。ああ、礼二もう射精しちまってるよ……! 妹の痴態見てやっぱり発射しちゃったか。
アナル攻撃から解放された美羽は体をほんのり桜色に火照らせてぴくぴく痙攣していた。
真弦は興味深そうに美羽を観察して眼鏡の位置を調整している。
「やっと尻からGスポットを探り当てる事が出来たっ。拡張までもうちょっとだ」
真弦は満足げにほほ笑んでいる。それはまさにミストレス(女王様)の表情だった。
むくり。美羽が起き上がって物欲しそうな顔で真弦を見ている。
まだ夜は遅くないし、第二ラウンドが始まりそうな……。
「美羽ー、真弦ちゃん、お風呂開いたダニヨー?」
予感がしたが、階下から牛山母が二人を呼び出し始めた。
しばらくしても娘からの返事が無いので不審に思った母親がドスドスと音を立てて階段を上がってきた。
ヤバいぞ、まつみう! 早く服を着ろ!
礼二は未だ逃走する気を見せず、息を殺しながら恋人同士の少女二人を見ている。
牛山パトリシアの声を聞いた真弦は咄嗟にクローゼットを開け放つ。
美羽の服を何枚か床に放り投げる。
美羽はいそいそと新しいパンツを穿き、脱ぎ捨ててあったブラジャーを付ける。
一方真弦はというと、ブラジャーを付けて美羽の割と大きめの服を着ようと頑張っていた。
コンコン! ドアがノックされる。
「美羽、開けテ。ママヨ」
美羽は下着姿のままドアを開けた。
「どうしたの?」
何食わぬ顔で美羽は母親に応じていた。
「アラ、ファッションショーごっこでもしていたのネ?」
「そうだよ。コーディネイトの勉強していたんだ~」
美羽は嘘をつくのが上手いな……。
「お風呂が冷めないウチに入るダニよ」
「うん、わかった」
パタン。こうして牛山母は去って行った。
うおおお、今日は最後までまつみうの情事を見れたぞ!
がくん。礼二は吾輩の達成感をよそに、床の蓋を閉めて膝をついて股間をカウパー液で濡らしながら一人で静かにめそめそと泣いていた。
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