19. 夜に勉強した事を早速恋人にも試す
メンソールの効果でおかしくなった淫獣真弦さんは光矢に襲い掛かるも、彼の愛撫や腰技で何度も絶頂を迎え、明け方になると気を失って潰れた。
オールナイトで獣の様にセックスしてた二人の体力はすげえもんだな。隣で一人暮らししているお爺さんと上の階の住人(外国人・男)から騒音の苦情来ないと良いけどな。
「天上院真弦……。初めての癖に手強い相手だったぜ……」
真弦に跨られて精液を搾り取られた光矢は青白い顔をしながら、その辺に散らばったティッシュやコンドームをかき集めてゴミ袋に捨てた。真弦を起こさない様にラグが敷いてある場所にそっと抱きかかえて移動させて布団カバーを交換する。汚い柄の布団カバーを洗濯用のスポーツバッグに入れた。
光矢はふと、メンソールの軟膏の入れ物を手に取ってゾッと身を震わせる。
「2回目以降コンドームしてなかったら俺も危うかったかも知れねえ……」
メンソールの軟膏は無駄買いして忘れ去られた調理器具で無法地帯になっている台所の戸棚の奥深くに封印される事になった。
真弦の喘ぎ声がうるさくて寝れなかったから、ずっとうとうと見てた吾輩もやっと寝れそうだな……。吾輩はお気に入りのこたつテーブルの下に移動して本格的に眠りに落ちた。
昼。吾輩はカーテンの隙間から差し込む陽光が眩しくて目を覚ました。
今日は真弦も光矢も登校日で家にいないと思っていたが、昨晩腰を砕かれた真弦だけが居残って布団に伏せていた。
「ニャー、ニャーニャー(真弦ー、飯ー飯―)」
吾輩が前脚で真弦の頬を押しても無言で押し返されるだけで、寝返りを打って餌の提供を拒否された。そうか、お前、股に物が挟まってる違和感と痛みが蘇ってきて起き上がれないでいるのか……。
「……光矢のばぁか」
真弦は書き置きの残されたテーブルを向いて呟くと寝息を立て始めた。
書き置きには「ゆっくり休んでいってね(学校休め)」という文章と光矢の画力で原哲夫風に劇画化されたゆっくりの鉛筆画が添えられていた。シュールな絵の横に痛み止めの錠剤の空と飲みかけのペットボトルが置いてある。
昨日の松葉楓襲来で戸締りを徹底している為、吾輩は外に出る事も出来ずに夕方までふてくされた真弦と一緒に空腹で過ごした。
数日が過ぎ、松葉楓のストーカー説は光矢の杞憂で終わったらしい。あの嵐の日に襲撃してきた女の姿は近所で見かけなかった。噂ではイギリスに留学したとかしないとか。
梅雨も晴れて、直射日光が厳しい蒸し暑い季節になってきた。
外を散歩する吾輩は日陰を渡り歩いて何とか暑さをしのぎながら日々を暮している。
おやつが欲しいので久々に美羽がいる牛山家に行ってみよう。そう思い立って、いつも空いているバスルームの窓から侵入した。
早速リビングに行くとしーんとしている。牛山夫妻は今日も仕事のようだ。
美羽は在宅なのかな? と玄関を見ると見慣れた小汚いスニーカーがあった。美羽もいるしうちの真弦も来ているようだ。
ああ、お家デートってやつか。
吾輩はただの猫だ。デートしてようがナニしてようがおやつが欲しいのでねだりに行こう!
階段を上がると早速、奥の部屋から押し殺したような喘ぎ声みたいのが聞こえてきた……。おーおー、やってるねぇお盛んだねぇ……。
奥の部屋のドアは閉まっている。先日、礼二が美羽の部屋に落下してきた件で修理したついでにドアに鍵が付いたようだ。中の者が許可しない限り入れそうもないな。
階段の手前にある礼二の部屋を見ると、相変わらずドアが半開きになっていた。セキュリティーに無頓着なのがコイツの欠点だ。
まさか、この前みたいにベッドの上で正座して美羽の部屋の方向をうつろな目で見ているんだろうか……。
「ニャー(入るぞ)」
礼二の部屋は相変わらずベッドと学習机と木製の箪笥しか目立った調度品は無かった。この前見た時は部屋中に貼られていた美羽の写真が綺麗に剥されて、所々生活のシミのある白い壁だけが際立ってて殺風景になっている。美羽の写真の代わりに『東大合格』の文字が筆で書かれた半紙が1枚だけ貼ってあった。そういえば礼二は浪人生だったな……。今年こそ大学に入学する為に邪念を捨てたのだろうか。
牛山礼二(一浪中)は参考書の山になった勉強机に向かっている。
おーおー、勉強熱心で良い事だ。と吾輩が礼二の背中に乗って勉強具合を覗き込むと……。
『あん、あん、あーん! 恥ずかしいよぅ窓閉めてぇ……』
妹の痴態を低いアングルから盗撮していた。
多分、ぬいぐるみか何かに小型カメラとマイクを仕込んでいるのだろう。
ノートパソコンのブラウザに半裸でスカート一枚の美羽と、着衣でバリタチの真弦がぼんやりと映っていた。ていうかさ、パソコンのスピーカーから声漏れてるよ! せめてイヤホンつけて見ろよ!
礼二の異常ぶりはもう末期かも知れない……。
最近の真弦はセフレの光矢とのセックスに溺れてたり同人合同誌の締切に追われてたりで、恋人の美羽といちゃつくのはご無沙汰だったみたいだ。
美羽の兄が隣の部屋にいるというのに、無視していちゃいちゃしている。
「美羽、そんなに拗ねないでくれよ。私が男の方に向いてたから寂しかった?」
真弦は百合のイケメンオーラを放ちながら、半裸の美羽の顎を持ち上げる。
「寂しかったよ。あのまま真弦が光矢君のものになると思ってたんだからね」
美羽はむうっと頬を膨らませて真弦を見ていた。
そんな美羽の膨らんだ頬を両手で挟んで空気を吹き出させて萎ませる真弦の顔はずっとイケメン面をしている。真弦のホットパンツの尻ポケットに細いリップ状の僅かな膨らみが、盗撮用のクマのぬいぐるみのカメラのレンズ越しに見えた。
「ごめんね、美羽。私は光矢からセックスのノウハウを学んでいたんだ。膣挿入に慣れるまで大変だったのを察して欲しい」
真弦は自分のボストンバッグからずるり、と禍々しいシリコン製のチンコみたいなL字を取り出した。両方の膣に入りそうな形状からすると双頭ディルドみたいだ。レズのマストアイテムみたいな物だな。
美羽は双頭ディルドを見ると顔を真っ赤にして伏せた。
双頭ディルドを恥ずかしがる美羽にあえて持たせる真弦はやはりSっ娘だ。
「いやー、通販の力は偉大だねー。光矢の名前と年齢でこっそり注文したんだ。お届け時間をあいつが帰って来る前にしておいてやっと手に入れられた」
真弦がいそいそと服を脱ぎ始めた。外歩き用のTシャツを脱ぎ、ホットパンツを脱いで下着上下になる。……下着は年不相応のババ臭い色気のない物だ。
「あ、そうそう」
何か思い出したのか、真弦は脱いだホットパンツをひっくり返した。しばらく後にポトッとメンタムのリップが床に落下する。
「え? リップ……? 真弦、唇荒れてたっけ?」
「くすくす、くすくす……」
真弦は唇にリップを厚めに塗る。
ちゅ……。美羽の左乳首に真弦の唇に塗ったメンタムの軟膏がぬるりと付着する。舌と唇で可愛らしい美羽の乳首が愛撫された。
「あうう……。何コレ?」
美羽の質問に真弦は答える事無く、美羽の右乳首にリップを塗りつけた。
まさか、真弦! 処女を失った時に偶然塗られてハマったメンタムの効果を美羽にも試そうというのか!?
真弦がハマったメンタムの効果は美羽にも効果てきめんだったようだ。
「……どうして……? スース―するのに体が火照るの……」
乳首にメンタムを塗られただけで美羽は次第に興奮し始めて自らスカートを捲り上げて真弦にアピールした。
「フフフ、美羽ってばいやらしい子。こっちも塗ってあげるね♪」
真弦は嬉しそうに美羽の陰唇にメンタムのリップをグリグリと塗りつける。
「あああああ、あっあっあっ!」
メンタムを塗られた美羽も被虐的だが嬉しそうである。
やがて、くちゅくちゅと水音が鳴り始めて、リップの軟膏が水分で塗りつけられずにただの棒になりつつあった。
真弦がリップを美羽の膣に誤って突っ込んだ。
「あ――――――っ!!」
快楽の絶叫と共に、リップが美羽の中からスポーンと吐き出された。
「……ハァハァ……ハァハァ……」
美羽は謎の快楽で絶頂を迎えて泣きそうになりながら、リップがいきなり飛び出してきて少々びっくりしている真弦を見上げていた。
「美羽、いつもよりビショビショじゃないか。さ、スカート脱ごうか」
Sっ娘の真弦は楽しそうだった。
美羽に壁側に向かせてスカートを焦らすように脱がせた。
「……真弦、そのオモチャ、つ、使うの?」
美羽は双頭ディルドの禍々しい形状に怯えている。
あえて真弦は答えずに美羽を後ろに向かせていた。
「四つん這いになってお尻突き出して」
ただ真弦はそう言って、美羽に床に手をつかせて尻を突き出すポーズをさせた。
美羽の桃尻を割ると、ひくつく肛門とぬらぬらと濡れた陰唇が見えて、それを真弦の指が触るか触らないかのソフトタッチでひたすら焦らした。
「真弦の意地悪ぅ……。もっとわたしに触ってよぉ」
美羽の下の口からはだらりと愛液が垂れ流れ、真弦に秘部を蹂躙して貰う事を期待していた。
猫の吾輩は礼二の肩越しにパソコンの画面を凝視していた。
ジーッ。礼二がGパンのチャックを下ろして中身をごそごそと取り出す。左手で肉棒の先っちょを押さえると、右手でティッシュを手繰り寄せる。
「はぁぁぁぁ美羽、美羽、美羽……!」
ブラウザ越しに美羽の桃尻がバッチリと映り込んでいる。妹の尻に欲情した兄の礼二は陰茎に被る皮を利用して上下に擦っていた。いわゆる皮オナってやつだ。
だんだんとチンコを擦るスピードが速くなると同時に、
『あ! このぬいぐるみ』
画面の向こうで下着姿の真弦が隠しカメラの存在に気が付いた。
『このテディベアがどうしたの? お兄ちゃんがこの前UFOキャッチャーで取って来たってくれたんだけど……』
『ホント、美羽は礼二に関しては鈍感だね』
真弦がぬいぐるみの首を鋏を使って引き千切ると同時に、小型カメラとマイクが転がり落ちて画面が揺らぎ、ゴフッガフッと雑音が混じった。
棚に飾ってあったピアノコンクールのトロフィーを真弦が躊躇もせず掴む。
『せいっ!』
真弦がトロフィーをカメラとマイクに振り下ろすと、パソコンの画面が真っ暗になり、ブーン……という電子音しかしなくなった。あれは完膚なきまでに叩き壊されたな。
「うっ!」
画面を見つめていた礼二はその瞬間に射精する。重ねられた数枚のティッシュにやり場のない精液が受け止められ、何度か礼二の体がビクンビクンと痙攣した。
やべえ、盗撮に気付かれたぞ!
吾輩は礼二から降りてパソコンの電源コードを口で引っ張った。
礼二、隠せ隠せ、今度こそ警察か精神病院行きだぞ?
その怒声は約30分後に礼二の頭上に振ってきた。
「礼二! 受験勉強はどうした? お前は受験生という立場を忘れてまた馬鹿な事をして!」
たまたま仕事が早く終わって帰ってきた父の牛山英二が息子を廊下に正座させて説教をしている。英二の背後には疑惑に満ちた表情を浮かべた妹の美羽と、腕組みして睨んでいる真弦がいた。
顔を真っ赤にしてガミガミ叱りつけてくる自分と面影が似た中年男を、礼二は何の興味も持たずに虚ろに見つめていた。
「うるさい。テメエは禿げ散らかって死んでしまえ!」
真顔の礼二は父親に向かってそう言い捨てると、すくっと立ち上がって自分の部屋に引っ込んで行った。バタン! と乱暴にドアを閉めた。
「ぬおおおお……! 父親に向かってハゲとは何だ? ハゲとは……?」
本人的に薄毛が気になりだしていた英二は頭を抱えながら身悶えて歯ぎしりした。別にふさふさ生えてるからハゲでも何でもないんだがな。営業職でよく家を空けている所為で、家長としての威厳は全く無かったようだ。
「お兄ちゃん! ふざけないで! パパもわたしも怒ってるんだからね!」
ドア越しに美羽が礼二に向かって怒鳴ると、キィ……と薄くドアが開いて、妙におどおどした礼二が顔を出した。
ガッ! 怒った美羽は礼二の部屋のドアを掴むと力任せに開けた。
たたらを踏んだ礼二を無視し、大股でずかずかと兄の部屋に上がり込んだ妹は真っ先に勉強机に鎮座している白いノートパソコンのUSBコードを引き千切った。
美羽は部屋の正面の窓を開けると、白いパソコンを両手で持ち上げてボールを投げるように外の道路に向かって放り出した。
ガシャ……。礼二のノートパソコンはアスファルトに激突した衝撃で簡単に破壊されて燃えないゴミと化した。
「うわああああああああああ! 俺のユートピアがー!」
「お兄ちゃん、パソコンでわたし達を盗撮してる暇があったら受験勉強しなさい」
「ご、ごめんなさい……。ぐすんぐすん」
妹に叱られた礼二は小さくなって子供の様にべそをかきながら素直に謝るのだった。
吾輩は真弦が恋人の美羽にメンタムを試している所を目撃出来て面白かったし、礼二の身に降りかかった不幸は自業自得だからどうでも良かった。今回は吾輩に天罰が下らなくて良かったと安堵するだけだ。
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