第14話「エナとネウロと薄暗い部屋」

 エナとネウロは薄暗い部屋へと案内される。

 窓にはカーテンが掛けられ、がらんとした室内の隅にはパイプ椅子が数個立てかけられている。

 エバナはそれを三つ持つと、一つずつそれを広げた。


「ここに座って」

 そうエバナが指示。


 ネウロはそれに素直に従う。

 真横に突っ立っていたエナはそれを横目で見た後、少し不服そうな顔をしつつ、前髪が浮くほど勢いよく腰を掛けた。


 エバナは二人の着席と沈黙を確認してから向き合って座ると、表情を曇らせたまま口を開いた。


「さて、今回の件、あなたたちどちらかのせいで非常に大きな問題となっています。多くの人を混乱の渦に巻き込み、多大なる迷惑を現在進行形で掛けています。そのことはきちんと理解していますね?」


「はい」とネウロ。

 一方、エナはそっぽを向いて沈黙を貫く。


 エバナは尋ねる。

「どちらが先に言い出したんですか?」

「私です」

 ネウロはエナを庇う気持ちで、迷わず即答。

 予想外の発言にエナは顔をネウロのほうに向けて目を丸くさせる。


 エバナは答える。

「そうですか……。おそらく、それ相応の処罰は受けることになるでしょう。覚悟はいいですね?」

「はい……」


 エナが立ち上がる。

「ちょ……、何言ってるの!? ネウロ! あなたは私のお願いに従っただけじゃない」

「…………」


 そしてエバナのほうに顔を向ける。

「エバナ! いい? これは全部私の責任なの。ネウロを処罰するなら私を処罰してよ」

「それはできません。仮にあなたがやったとしても、あなたは将来のあるプリンセスなんですよ?」


「……は?」

 エナの様子が一変する。

 身体をじっとさせ首を俯かせたまま棒立ち。


 エバナの放った言葉がエナの逆鱗に触れたのであろうことは、ネウロにもすぐに解釈できた。


 そんなエナの様子を気に留めることもなく、エバナは続ける。

「あなたは特別なんですよ? 他の人間とは違う。みんなから敬われ、重んじられなければならない」


 エナはその言葉を聞くとエバナを睨み付ける。


 そして横に座っているネウロの手を引っ張った。

「行こ」


* * *


 部屋に残されたエバナは追いかけることもなく座っていた。

「まったく……、城にいる以上どこに逃げたってどうせ捕まるっていうのに」


 そして溜息。

(昔はあんなに聞き分けのいい子だったのに……、どうしてこんなことになってしまったの……? 私は一生懸命やってきたつもりなのに……)

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