朝起きたら酒場兼宿屋がダンジョンになってた件について
雨都沙恵
scene0:外がダンジョンです。どうしよう
そう。これは現実ではなく夢だ。夢じゃなかったらこんな事なんて起こるはずもない。
窓からは朝日が差し込み眩く外の景色が見える。窓が開かなかったり硝子が割れなかったりするのは防犯上、強化魔法か何かが
しかし………しかし、だ。何故か僕が居る部屋のドアを開けてみると、そこは廊下が続いているんじゃなくて蔦の張った冷たい石壁にデコボコとした石の床。まるでどこかのダンジョンの様だ。
「………幸いなるかな、部屋に電話が付いている」
恐らくは下の階……僕が泊まった場所は酒場兼宿屋でその酒場スペースに繋がっているのだろう。電話って言ってもダイヤル何かは付いていない受話器オンリーの代物。受話器を取れば勝手に繋がる仕組みなのだろう。
僕は受話器を取ってみる。案の定コール音が流れて、暫くすると繋がった。
『はい。何か御用件でしょうか』
昨日泊まる前に聞いたマスターさんの声。やはり酒場スペースに繋がったみたいだ。
「あの…………申し訳ないですけど………部屋の外がダンジョンみたくなってるんですけど」
そう言うとマスターさんはあー……と、何か思い当たる節があるかの様に言葉を続けた。
『申し訳ありませんね。数か月に一度、当店……【
「仕様!?」
仕様でダンジョンかする酒場兼宿屋など聞いた事もない。何か呪われたりでもしてるのではないだろうか?
『部屋には備え付けの武器一式が用意してありますので、頑張ってダンジョンを攻略して下さい』
「いや………頑張ってって言われても………」
抗議しようとしたら突然電話を切られた。詐欺って言うか、色々ヤバい。呪いたくなってくる。
僕は、盛大に溜息を吐いた。
…………錯乱していた故に状況の整理を忘れていた。
ひとまず状況は…………
・可愛い女の子の気配がするので偶然にあった酒場兼宿屋に泊まった
・可愛い女の子のが居るのは確かだったが時間が時間だった為に就寝中だった(酒場の常連さんが可愛い言ってたから間違いない)
・時間も時間だから宿屋スペースに泊まる。お代はタダ
・部屋は違えど可愛い女の子と一つ屋根の下で寝れる事に大ハッスル
・気持ちよく就寝
・起きたら宿屋スペースダンジョン化
・当然まだ可愛い女の子には出会ってすらない
…………何を言っているか判らないかもしれないが、僕自身、可愛い女の子に巡り合いたい事以外何を言っているか判らない。
とりあえず僕はダンジョン化した宿屋スペーから脱出する事よりもまず、可愛い女の子と巡り合う事を優先した。可愛い女の子は二階………つまりこのダンジョン化した宿屋スペースで寝ていると言う事が昨日時点で確認されている。
つまり、
・このダンジョン化した宿屋スペースで可愛い女の子と巡り合う
・格好良く可愛い女の子を守りながら脱出する
・僕、カッコイイってなって可愛い女の子から好かれる
・そまま二人してフォーリンラブ
「…………実に完璧な計画だ」
よく友人からはゲスいと言われるがそんな事関係ない。ゲスかろうがなんだろうと勝った方が勝者なのだ。
「さあ、行こう。可愛い女の子とフォーリンラブする為に!!!」
備え付けの武器を取り忘れるどころか、荷物自体を部屋に置いたまま飛び出して行った為、僕は激しく後悔する事と僕はまだ知らない…………
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