第四話 転編「開花の華」 part2

 転編「開花の華」 part2


 僕は、青空という言葉がそのまま当てはまりそうな空を、惚けながら見上げていた。断続的に脳裏に思い浮かんで思考を支配するのは、昨日、春華さんが言った"デート"という言葉だ。

 どうして春華さんは、僕をデートに誘ったのだろう。そんな疑問符が昨日からずっと頭の中で渦巻いていた。

 昨日は突然にデートの誘いを受けてから、神速の勢いで病室から出されてしまったから、考える余裕すらなく、春華さんにデートに誘われたという事実だけに上気していたけれど、一晩たった今なら冷静に考えられる。

 思えば、昨日の春華さんの取った行動は、僕をデートに誘うために練られたものなのだろう。僕に病室で宿題をやらせることに拘っていたのは、土曜日に気兼ねなくデートをするためだからというのが、今なら分かる。

 でも、どうしてデートに誘われたのかだけは、想像ですら理由が分からなかった。昨日の春華さんは、デートに誘う前後で明らかに様子がおかしかったし、何かしらの理由はあるんだろうけど……まったく分からない。と思いつつ、僕はひとつの可能性を思い浮かべてしまっていた。

 口に出してしまうのは、憚られるし、なんというかその可能性を考えてしまっただけで、自意識過剰なのではないかと自分自身が不安になる、そんな可能性だ。

 では僕が何を考えてしまったか、それは――春華さんは僕のことが好きなのでないだろうか、という可能性だった。

 いやいや、ないない。考えてからすぐに心の中でその考えを振り払う。

 僕なんて何処にでもいる普通の高校生より、冴えない人間で、人との付き合いを相手の顔色を窺わないとできない人間なのだから、春華さんが好きになるなんてあり得ないことだ。

 永遠に自分の中だけで考えていては、デートに誘ってくれた理由って問題に答えなんて、出すことはできない気がするなぁ。

 行き詰った考えを放りだすように、スラックスのポケットから携帯を取り出して、画面の中に映る時刻を確認する。

 十二時四十分か。少し急ごう。

 春華さんがデートに誘ってくれた理由は分からないものの、折角、誘われたんだから異性との初めてのデートというものを楽しむとしよう。

 僕は邪で、迷いある心を青空に投げつけるように見上げてから走りだした。色々な理屈を頭の中で考えようと、春華さんと何処かへ一緒にいけるのが嬉しいという、素直な心からの欲求には逆らえないらしい。

 ただひとつ気になるのは、着ていく服に悩んだ挙句、脱ぐこともそんなにないだろうと黒いダッフルコートの下は、カッターシャツとブレザー、そしてスラックスという学校指定の制服を着てしまっていることだった。

 もし見たときに、失望されないといいなぁ。


 ……

 …


「随分と早いじゃない」


 病室で出会った春華さんのジトっとした目からの第一声は、不満げなものだった。

 時刻は十二時四十五分。確かに、少し着くには早すぎたかもしれない。なんだかんだ、春華さんとデートに行けるというので気持ちが逸っていたみたいだ。

 こういうの、早く着きすぎるのも相手が準備できていないとかで、問題なのかもしれない。

 

「ご、ごめん、まだ準備できてなかった?」


 口にしながら、春華さんの格好をさりげなく見る。

 当然のことながら、いつもの白く長袖のワンピースではなかった。春華さんは僕とは間逆の白いダッフルコートを着ている。ダッフルコートの中に着ているものまでは判別がつかないけれど、ダッフルコートの下には、膝上程度にまで伸びていて、一定間隔で赤い縦の線が入っている以外には黒い質素なスカートと黒のストッキングを着ているのが分かる。

 普段と違う服装をしているだけなのに、見慣れない服というだけでなんだか別人のように感じられて、新鮮な気持ちだ。にしても、春華さんのスカートはどっかで見たことがあるような気がして、しょうがない。

 何処で見たんだろう?


「心の準備ができたら病院の玄関で待って、声かけようと思ってたのに……」


 僕が見覚えのあるスカートの記憶を引きずりだそうとしていると、残念そうにぼそっと呟かれる。

 春華さんの中では、どんな計画が渦巻いていたのだろうか。病院の玄関で待つとかの意味は、待ち合わせの場所を昨日のうちに指定してるのに、理解の及ばないところだけど、最初の計画を潰したらしいことは、確からしかった。


「そんな計画だったんだ……ごめんね」

「そこは聞こえたのならスルーして。そういうこと言われると、私がそんなこと考えてたんだって、余計に哀しくなっちゃうから」

「うん」

「……ほんと、純粋というかなんというか」

「純粋……?」

「よく言葉が入る耳ねー。なんでもないわよ、いきましょうか」


 そう言いながら春華さんは、自然に僕の右手を握ってしまう。

 あまりに滑らかな動作で握られたから、驚く余裕も足を止めることもなく、病室から連れ出された。

 背中から見る春華さんの動きは、心なしか軽やかで、うきうきしているように思えた。

 駆けると同時に後ろから見た春華さんのスカートに、僕は声を漏らしそうになる。見たことのある見た目だな、と思ったらそれは、学校指定のスカートだったからだ。

 どうやら僕と春華さんは、どちらとも制服を着用してデートに挑もうとしていたらしかった。


 ……

 …


 病院から出た僕は、青空を見上げたり、時々相手の顔を盗み見たりして、無言のまま緊張感というものを覚えながら住宅街を春華さんと歩いていた。

 春華さんは春華さんで、ずっと前を見たまま歩を進めている。彼女は質素なコートを着て、ただ歩いているだけなのに、そこには不思議と引きつけられる華やかさと近寄りがたい孤高さが介在していて、僕が隣で歩いていること自体がとても不釣合いなもののように思えてしまうから、尚更声をかけにくい。

 一区画、二区画と抜けるたび、次第に住宅街から賑やかな繁華街へ辺りは変貌しようとしていた。

 このまま真っ直ぐ行くと、そろそろ僕が通っている学校が見えてくるはずだ。そう思いながら正面を見据えてると、すぐに真っ白でこれぞ学校と言った感じの横長の建物が右方向に見え始めた。

 物言わぬ建物として、住宅街と繁華街を結ぶように君臨している学校からは、どこからも声は聞こえることはない。今日は休日で、テストがもう少しで始まる関係から部活は活動を停止しているから、普段の部活動が盛んな賑やかさから考えるなら、それが嘘のように静まり返っていた。

 春華さんの様子を窺う。

 口を硬く結び、笑顔でもなく緊張した面持ちのまま、ただ真っ直ぐ繁華街へ向けられていた視線が、学校の前を通る間近で学校に向き、突然と足が止まった。僕はいきなり止まった春華さんについていけず、二歩進んだ程度のところで足を止めて振り返って春華さんの隣に並んだ。

 仰ぐようにして、グラウンドの奥に存在している校舎を春華さんは見上げていた。

 入学してから、一度もこの学校に通ったがないって言っていたし、気になるんだろうな……。

 春華さんは、ぼーっとした様子で校舎を見上げながら、そよ風に細やかな髪をなびかせる。


「私、この学校に通える予定だったのよね」


 それは感情の奔流から思わず漏れでて来てしまったような、不意の言葉だった。絶望か失意か、はたまた期待だったものか、僕の想像の範疇を超えた様々な感情が言葉と表情に含まれているようと感じられて、声をかけられる雰囲気じゃないように思えてしまう。

 学校を見上げている彼女を支配している感情は、おそらく並大抵の言葉で解決するものじゃないだろう。それだけは、前に春華さんが言っていた、学校に通えなかった理由というものから推測できる。

 小学校も中学校も一度たりとも学校に行けなかった春華さんの調子がよくなって、入試のあとようやく掴んだ高校への通学は、再び体調が悪くなり実現しなかった。

 初めて学校へ行くという期待感と、空想の中の出来事でしかなかった通学という行為自体が、とても重く大事なものだったということは、今までの春華さんを見ていたらよく分かることだ。

 このまま何もせずに春華さんを放っておいたら、自分の中だけで全ての気持ちに結論をつけてしまうだろう。

 言葉でしか春華さんの体験したものを知らない僕には、今掛けられる言葉がないかもしれない。それでも、ここで声を掛けなかったら後悔すると理解していた。

 単純に心を突き動かすのは、春華さんに笑顔で居て欲しいという、あまりにも自己中心的な考えでお節介なものだけど、彼女を俯いたままにさせたくなかったから、不安になりながらも、緊張しながらも、僕はまた一歩を踏み出した。


「今からでもまだ通えるよ。きっとみんな、春華さんのことを知ったら歓迎してくれる。学校、入ってみようか? 春華さんはここの生徒なんだから、先生に言えば少し入るくらいなら大丈夫だと思うよ」


 話しかけられるとは思っていなかったのか、ぼーっとしていた春華さんは驚いたように僕へ視線を動かして、僕の顔を一刻見つめてから、静かに寂しさのある微笑を浮かべた。


「そうね……私はまだここの生徒で、卒業まで一年もあるんだし、いつか通えるかもしれないのよね。もしもそうなったら智くん、一緒に登校してくれる?」


 訊きながら、春華さんは誘うように右手を僕に差し出す。迷いなく差し出されたその手を拒む理由なんて僕にはなく、考えるより早く右手が動いて、春華さんの手を握った。

 

「そんなの当たり前だよ! 僕は春華さんと登校できるなら嬉しいし、日の出が出るくらいには駆けつけるよ!」


「ふふつ、それはさすがに早すぎるわ。まだ私も寝てる時間だもの」

「あっそうだよね。誘ってもらったのが嬉しくて、気持ちがはやっちゃったみたいだ」


 風がそよぐ中、暖かな心で繋いだ手は肌と肌の繋がりだけの暖かさより、よっぽど暖かく感じられる。そう感じる理由は、春華さんに少しでも声をかけられたからなんだろう。

 あのまま誰に話すこともなく、自分の中で完結されて心のタンスに仕舞い込まれてしまうより、言葉と言葉で通じ合えたと思えるから尚更暖かく思えた。

 春華さんは、握った手をゆっくり柔らかく解きながら、口元を緩めて嬉しそうに校舎を見上げる。その瞳と表情は、先ほどまでの正と負の様々な感情が入り混じった複雑な表情はなく、澄んでいた。

 繋いだ手を離すのは名残惜しいけれど、もう大丈夫そうだ。


「ありがとう。でも、今日はいいわ」

「いいの……?」

「ええ、だって今日は折角のデートなのよ。智くんがいやならデートを切り上げて、学校に行ってもいいけど」


 いつものように少し意地悪を言う春華さんに、僕はいつもの調子よりも元気に返して、今度は僕の番とでも言うように左手を春華さんに差し出した。


「嫌だなんてこと絶対ないよ! 行こう、春華さん」

「うん」


 春華さんは緩やかに頷き、僕が差し出した左手を春華さんが右手で握って、僕たちはまた繁華街への一歩を踏み出した。


 ……

 …


 繁華街に着くと、世間一般では休日ということもあってか、人で混雑していた。特に見かけるのは僕と同じくらいの年齢の人たちで、学期末試験の前に羽を伸ばそうとしているのがありありと見える。

 デートをしているように男女で手を繋いでいる人たちも居て、僕たちはその姿がとても恥ずかしいもののように思えてしまい、繋いでいた手と手を自然に離してしまった。

 力を入れすぎると潰れてしまうような繊細で柔らかく暖かな気持ちのよい手の感触を思い出しながら、春華さんに今日の行き場所を聞く。

 手を離してしまったことを僕は少しだけ後悔しているらしかった。


「春華さん、今日はどこに行くの? 昨日はもう行く場所決まってるって言ってたけど。繁華街に来たからここら辺?」

「ここよりちょっと先に行ったところが今日行く予定のところなんだけど、そこは日の入り前に行くのが一番いいらしいから、もう少ししてから行きましょう。

 私はそれまでここを見て回りたいんだけど、いい?」

「うん、いいよ」


 そう言って、僕たちは繁華街で人混みに紛れ始めた。

 人の流れに沿いながら歩き始めて、数分で気づいたことがあった。どうやら春華さんは店先にある大抵の看板には反応してしまうようで、歩きながら辺りにある看板を見るたびに黒い瞳の奥で心を輝かせるようにしていた。

 春華さんは今まで学校に行ったことがないと言っていたから、外にでる機会も殆どなかったようだし、お店というもの自体が珍しいということなんだろうか。だとしたら時間までの間、ただ見て回るだけじゃなくて、僕が繁華街を案内するというのが楽しいかもしれない。

 思って提案しようとした矢先に、物珍しそうにハムエッグたい焼きの看板を見て店先に立ち寄りながら春華さんが悪びれるように言いはじめる。


「智くんはこんなところ何度も歩いているだろうから、見て回るだけじゃ楽しくなくて詰まらないかもしれないわね……」

「僕は楽しいよ。ちなみにそのハムエッグ美味しいから食べてみる?」

「そ、そう。別に気になってたわけじゃないわ。ええ、知ってるもの――おじさん一個頂戴。でも、歩いてるだけなのに本当に楽しいの?」


 春華さんは素っ気無いようにしながら流れるようにハムエッグたい焼きを店先で注文していた。口では気になっていないと言いつつも、どんなものか気になっていたみたいだ。

 別に知らないからって珍しいものだから意地張るようなものでもないはずなんだけど、言うと春華さんはムキになりそうだから黙っておこう。


「ただ単に歩いてるから楽しいんじゃなくて、春華さんと一緒に歩いてるから楽しいんだ。春華さんが色々なとこを見て楽しそうにしてるのを見るのも楽しいし」

「……そっか。相変わらず智くんは、恥ずかしいことをためらいなく言うのね。悪い気はしないけど恥ずかしいから公衆の面前ではあまり言わないでね」


 少し照れたように春華さんは僕から顔を逸らしながら言った。

 確かに普段のように考えることもせずに口に出してたら、変な勘違いをされそうだし、気をつけよう。

 

「ご、ごめん……気をつける」


 春華さんは何重かの紙に包まれたハムエッグたい焼きを受け取って、お礼を言いながら謝罪を聞いて口元に僅かな笑みを浮かべた。


「謝ることなんてないわ。智くんが詰まらなかったら悪いからね、折角のデートなのに」


 どうやら、自分ひとりだけで楽しんでいるんじゃないかって疑問が春華さんの中にあったから詰まらなくないか、って聞いてきたらしい。

 僕はただ春華さんと歩いてるだけでも楽しくて、心が安らぐからそんなこと気にしなくてよかったのにな。

 

「じゃあ、僕に春華さんの案内をさせてよ。そんなに来るわけじゃないから、詳しく知ってるわけじゃないけど、少しくらいなら案内できると思う」

「智くんがそれでいいっていうなら、うん、お願いしようかな。当てもなく歩き回るのも大変だし」

「わ、分かった。あんまり期待されても自信ないけど頑張るよ」


 こうして僕たちの繁華街巡りは始まって、午後の16時頃まで続くことになった。

 色々な店先を目にしては、春華さんはどういうお店なのか聞いてきて、そのひとつひとつに足を運んだ。

 繁華街を巡っている間、新しいものや本の中で言葉と想像だけでしか知らなかったものに出会うのが本当に楽しくて、嬉しくてしょうがなかったのか、春華さんは僕が見たこともないくらいに、表情を何度も嬉しそうに変えた。

 空っぽな顔や、陰鬱な顔をしている姿や、僕が病院の入口付近から見た何も楽しくなさそうな表情をしていた春華さんを知っているから、何時間も表情がころころ変わる春華さんは一層、深く脳裏に刻み込まれるように印象に残って、その時間は川に流れる水のように、あっという間に過ぎていった。


 ……

 …


 春華さんが日の入り前に来たかった場所は、繁華街を通り抜けてさらに舗装された林の中を抜けた先にあった。

 林を抜けたあとのこぢんまりとした広場のような空間には、強烈な存在感を放つ一本の大きな桜の木があって、その奥では地平線の先まで海を見渡せるような断崖があり、断崖の前には転落防止用の柵が張られている。この場所を言葉だけで表現すれば、この世のものとは思えない幻想的な雰囲気がある隔離されたような場所だった。

 もっともこの場所を幻想的に感じる理由は、ただ単に桜の木が断崖にあるということだけじゃない。

 桜の木は咲く時期を一ヶ月ほど間違えたのか、既に満開の様相で、花びらを潮風に乗せて優雅に散らしている。

 また、地平線の海に深く沈もうとする夕日が放つ、黄金のようにも見える茜の光がここら一帯を包み込んでいたのも、この場所が幻想的に思えてしまう理由のひとつのように思えた。

 夢のような空間に夢中になって、他のことにはまったく目もくれられないほどに、海と夕日と桜の木は絶妙な景色を描いて、冬の気候を宿して吹き抜ける風が花びらを舞い躍らせて、桜の木の隙間から見える夕日に、まばらな模様を飾る。


「綺麗……」

「うん……」


 放心したみたいに呟いてからしばらくの間、僕たちは感嘆という単語すら忘れて、自然の織り成す景色に、ただただ視界を奪われ続けていた。潮風が吹けば、それに呼応するように桜の木が揺らめき、花びらを散らし、その花びらは夕日を経由して何枚かは海に落ちていく。その光景が輪廻するように何回も、何回も続く。

 しかしその景色も、気づけば動き出していた春華さんによって変転を迎えた。

 未だ景色に目を奪われていた僕を置いて、先に一歩を踏み出した春華さんは、桜の木の根元で長い髪を翻らせて僕に振り返り、優しげなその黒い瞳で僕を捉える。

 本能的に春華さんへ付いていこうとした一歩を、理性的に止める。春華さんから、話があるとでも言うような気配が感じ取れるように思えたからだ。


「……智くん、今日は本当にありがとう」


 潮風に乗って届けられたのは、人はこんなにも穏やかな声を出せるのか、そう思えるくらいの心の芯に溶け込むように響く声色と、心の底からの心地良い暖かさを感じる言葉だった。

 相手に本当に感謝していなければ出せない真剣な暖かさを持った言葉、僕もそれに習うようにして返事をする。


「ううん、僕のほうこそ今日はとっても楽しかった。誘ってくれてありがとう。春華さんの案内をするだけでとっても楽しかったし、最後にはこんなにいい場所にも連れて来てもらえた……一生の思い出だよ」


 言葉を受け取った春華さんは、今日の一日を思い出すように目を閉じる。

 他の人から見れば、今日のデートでしたことと言えば、たった三時間程度を外に出て一緒に歩いただけのことに過ぎない。さして重要だと思えるような会話もなく、病室で話しているのと変わらないようなことを僕たちはデートの中で話していた。けれど、それが何よりも大切な時間のように心の中で煌びやかに浮かび上がる。

 芸能人では誰が好きだとか――小説家で何が好きだとか――好きな食べ物だとか、なんてことのないものばかり。

 それでもふたりで外に出て、話をしながらデートをしたという事実だけで、それは無駄な時間などではなく掛け替えのない時間だと思うことができた。

 端的に言うのなら、幸せだった。何事にも変えられない幸せが、今日は詰まっていた。幸せだったことに理由があったわけじゃない。

 僕たちは長い時間を過ごしたわけでもなしに、たった数日間一緒に居て、お互いのことを何ひとつ知らなかった人間だ。ふたりで居たから幸せだった、なんて普通言われても積み重ねた日数のない僕たちの言葉は信じられない人もいるだろう。それでも、僕はふたりで居ることがもっとも幸せなのだと本能から、もっと大胆で途方もないところから言えば運命のように感じられた。

 それは春華さんも同じなのだろう。

 しっかりと目を開けた春華さんの瞳は、曇りなく全てを見通すかのように透き通っていた。


「喜んでもらえて何よりだわ。私も今日のことは一生の思い出よ。きっと、何があっても思い出したら幸せになれると思う。私の人生でこんなにも楽しい時間は、もう一生こないんじゃないかってくらい、忘れられない幸せな一時だったわ」

「一生こないって、そんな大袈裟だよ。もっともっと幸せな事はたくさんあるはずだよ」


 何気ないあり得る未来を語る言葉に、春華さんは視線を逸らして顔を伏せてしまう。

 それに反応するかのように潮風は途端に止んで、風に運ばれていた桜びらたちも舞わなくなり、僕たちの間を静寂が包み込む。

 もっともっと幸せな事はたくさんあるはずなんて、考えなしの無責任な言葉だったように聞こえてしまっただろうか。

 しかし僕は、春華さんが幸せになれる人だと信じて疑っていないし、僕たちなら幸せに過ごせると、そう思っている。けど春華さんの考えは、また違うのだということを春華さんの仕草が物語っていた。

 夕日が沈んでいき、夜の帳が着々と忍び寄って、陰と陽を体現するような空に沈痛な面持ちで顔をあげて、春華さんはゆっくりとした口調で独白し始めた。


「そうよね、智くんはそういう風に言える人なのよね……私には智くんみたいに幸せな未来を思い描くことなんて、できない。

 未来を真剣に考えれば、考えるほど未来への選択肢を思いつかなくなって、思考の突き当たりに未来が存在しない気さえしてしまう……。

 今だってそう、話している間にも私は本当に未来に希望があるのか、分からなくなってる。今日は生まれてきてから、一番楽しかったとすら思える日だった。それは紛れもない事実よ。でも、明日、明後日、一ヶ月、この先にある未来を私はどう足掻いても想像できない。進む先で、また哀しみに満ちた絶望に突き当たるのだと思うと、一歩を踏み出せない。幸福な未来より、平凡で退屈な巡り巡るような未来を求めてしまう。

 ねぇ、智くんはどうして……希望のある未来を一歩踏み込んで想像できるの……?」


 春華さんの問いかけからは、果てしない明日への絶望が滲み出ていて、僕の考える幸福であり得るはずの未来すら、絶望に染まってしまうような気さえしてしまう。そんな風に思ってしまうほど、春華さんの声色は心に重く伸し掛かった。

 ずっと病院に居た苦しみ、学校へ行けなかった苦しみ、笑顔になんてなれなかったと思われる苦しみ、春華さんやナースさんから聞いた話のどれをとっても、深い絶望に彩られているとしか言いようがない。

 きっと僕が聞いたことのあるもの以上に、春華さん本人の絶望は心の中にそれこそ、うんざりしてしまうほどたくさんあるはずだ。だから前へ進むことを拒んで、そこで足を止めてしまう。

 でも、僕には春華さんの感情を解消してあげることは、おそらく出来ないし、春華さんが納得できるような答えを用意することもできない。彼女の考えに触れるような答え方は、上辺だけの薄っぺらな答えにしかならずに、春華さんの絶望を増やしてしまう行為だろう。だから、僕のことを答える。

 どうして、幸せな未来を考えられるのか。

 僕だって、未来にずっと幸福が続いていると思っているわけじゃない。足元が崩れ落ちて、絶望の暗闇に叩き落されることも当然あると思っている。

 それでも――。


「僕は春華さんと一緒に居るから、それだけで日々が幸せだと思うから……希望のある未来への一歩を踏み出して想像できるんだ。

 誰にだって、未来のことは不透明で分かるものじゃない。明日は今日よりもっと悪い出来事が待ってるかもしれない。でも春華さんと一緒なら何があっても幸福なんだって、そう思えるから僕は幸せな未来を見てられるんだよ。

 春華さんが幸福な未来を見れない原因は……春華さんの身に起きた出来事を体験していない僕には、まったくの想像もつかないことで、薄情に聞こえるかもしれないけど、春華さんの絶望を払拭するなんて無責任なことは言えない。春華さんの痛みは春華さんだけのものだから、それは春華さんがなんとかするしかない。

 でも、哀しい過去は変えられなくても、楽しい未来は作ることができる。これからの未来はいくらでも明るいものにできるはずだから……僕と春華さんならそれができるって、そう思ってるんだ」


 僕は心にある、春華さんに今伝えたいことを、全部吐き出したような気さえしていた。他人にとってはくだらない、浅はかで理由のない直感的な考えだけど、それが僕の考えていたことの全てだ。

 春華さんはどう思うのだろう。いつものように、僕をからかうように笑ってくれるだろうか、何も知らないくせに、と蔑むだろうか。僕の言ったことは全て理想論で、言葉としては何の重みもないものだけど、気持ちだけは込めたつもりだから、伝わるだろうか。

 そうな風に良いことや悪いことを考えながら時間の経過を待っていた。

 春華さんは思いを馳せるように、あかね色の空から、いつの間にか暗闇が蠢くように瞬いていた夜空を見上げて、短く返事をした。


「そうね……そうなると、いいわね」


 用意されたのは、笑顔でも蔑むようなものではなく、簡素で味気ない平坦な声色での回答だった。その声色は作ったようなものであり、作ったようなものではないという半々の感覚が僕を包み込む。

 発せられた言葉通りにに幸福を望むのと、発せられた言葉と違い幸福を望めないのと半分ずつが介在しているような、どちらにでも転がると思える声色に、僕が言葉を発するより早く、春華さんは空を見上げて口を開いた。


「もう夜ね……帰りましょうか」

「……うん」


 言って、早々と歩き出した春華さんの後ろをついていく。

 舗装された林の中では、一定の間隔で足元を仄かに照らしている外灯だけが、目についた。五歩進めば一度視界は暗くなって、また五歩進めば視界が明るくなるのを繰り返しながら、僕たちは繁華街へ続く道を歩いていた。

 デートをしていたときとは違って、無言のまま時間だけが過ぎていく。居心地がよかったり、悪かったりするわけではない、他人と歩いているような幸福でも不幸でもない時間がそこにはあった。

 前を歩く春華さんは何やら考え事でもしているのか、後ろからでも分かるくらいに頭を俯かせている。

 僕の言葉が、彼女をこんな風にしてしまっているのだろうか。

 希望を詰め込んだはずの言葉は、もしかしたら春華さんの中では絶望を詰め込んだ言葉……のように聞こえていたのかもしれない。

 でも、絶望に変えられてしまうような背景が僕には分からないから、どれもこれも憶測にすぎない。

 学校にいけなかったことが、春華さんの中に闇を落としていたひとつには間違いない。けれど、それは丸っとしたクッキーの一欠けらのような、取るに足らない闇だったりしたのかもしれない。

 もし、そうだったとしても僕にできることは――以前と変わらない。そう、変わらないんだ。

 息を吹きかければ消えてしまう蝋燭の灯火のように揺れ動く、春華さんの背中を僕はじっと追い続けた。


 ……

 …


 春華さんとデートをした日から、五日が瞬く間に過ぎていった。

 この五日間、デートの日に春華さんが言った言葉の意味を計ることを彼女は避けているのか、口にも態度にも表すことはなかった。

 僕たちは、その間を以前となんら変わらないように生活して、いつもの穏やかな日常を謳歌していた。学校が終わってから病室に訪れて、夕日が落ちる前に帰る、という少しの時間だけど、その日々はもう生活の一部と言っていいものにすら、なっている。

 いつも病室でひとりで居た彼女が、自分の中に存在する陰鬱なものを明確に言葉として現したのはデートをした日が初めてのことだ。だから当然、僕は紡がれた言葉の意図を気にしている。春華さんは、自分は幸せな未来を見ることはできないと言っていた。でも、春華さんに僕は哀しい過去は変えられなくても、幸せな未来を作れると言ったから、彼女が過去を振り返り後ろを向いてしまうのなら、僕は前を向いて春華さんと一緒に居て、出来うる限りお互いの未来を幸せなものに出来たらいいと思った。

 学校終わりに訪れた春華さんの病室には、肩まで布団を掛けて休んでいる春華さんの姿があった。布団は定期的に上下して、息をしていることが分かる。

 今まで見たことのない姿に、言いようのない霧のように不透明な不安を覚えながら、ベッドの隣に置いてある丸イスに座る。

 春華さんは枕に頭を預けて、天井を見上げていたけど、僕の存在に気づいたらしく、だるそうにしながらも呼びかけてくる。


「……智くん」

「うん、今日も来させてもらったよ……具合でも悪いの?」

「そう、ね……。少し悪いかしら」


 端整な春華さんの顔が、僕の視界に映る。平常の顔は病的なように純白で、どこか健康的な雰囲気があるのに、今日の顔は、見るものが悪寒を覚えそうになるくらいに青ざめていて、本当に調子が悪いのだと一目で判断できた。

 デートした日は寒くて、それなりに長い時間外に出ていたから、もしかしたらそのせいで体調が悪くなったとかじゃないだろうか。

 春華さんは病院の比較的近くにある学校も繁華街も見たことが殆どなかったようだし、外に出ること自体が久しぶりだった可能性もある。その疲れが五日がたってるとはいえ、現れるというのは別段、不思議なことでもない。

 どうしてデートをしている間に、疲れていることを気づいてあげられなかったのか。自責の念が膨れ上がりなりそうになる。


「……智くんのせいじゃないわよ?」


 僕は思考を悟られるような表情でもしていたらしく、思考していた僕に春華さんの放った言葉は、気遣うようなものでいて、きっぱりと可能性を否定するものだった。


「でも……」


 否定された言葉をもう一度紡ごうとする僕に、春華さんは深呼吸して一度呼吸を整えた。

 できるだけ平常を装うとしているのが、その姿から見て取れて、見ているだけでも、心が締めつけられるくらいに苦しく、顔を背けたくなる。


「でも、も何もないのよ。一ヶ月に一度の頻度で私は体調がとても悪くなるの。それを乗り切ったらどうってことはないから、あまり気にしないで。智くんとデートしたのが原因とかじゃ別にないし……それに智くんも丁度いい時期でしょう?」

「丁度いいって……何がかな?」


 僕には春華さんの言わんとしていることが、よく分からなかった。こんな辛そうにしている春華さんを目の前にして、丁度いい時期だなんてことは、口が裂けても僕には言えそうにない。


「あなた、そろそろ学期末の試験でしょう?

 勉強にも集中しないといけないだろうし、遊んでる余裕はないでしょうから、私が体調悪くなったのも丁度いいって思っただけよ……」

「そんなことで丁度いいなんて、僕には言えないよ……」


 僕の否定する言葉に、春華さんは力なく息を吐きながら笑う。


「ふふっ……そうでしょうね。でもね、見ていても分かると思うけど……話しているだけでも体の何処かしらが異常を告げていて、辛いのよ。だから言っていることでもあるの。

 でも智くんに会いたくないって、言ってるわけじゃないのよ。智くんが学期末試験を終わらせる頃には、良くなっていると思うから、そのときに、また会いましょうってことを言ってるの」

「……」


 僕は、その提案に頷くことしかできなかった。至極真っ当な提案で、反論する理由がなかったからだ。

 丁度いい時期だというのは、春華さんが言った通りで、学期末の試験に備えるために今日からしばらくこれないことを言おうとしていたから、タイミングとしてはいいと言えるのかもしれない。

 それでも、不調を表している春華さんをずっと放っておくこととなることに、一抹の不安を感じてしまった。

 そう考えていたことが見抜かれてしまったのか、春華さんが手を伸ばして僕の頬を撫でた。


「私のこと心配だって顔してるわね。ありがとう、心配してくれて嬉しいわ」


 春華さんの手は、熱がなく、ひんやりとしていた。死人の手というのは、こんな感じなんだろうか、そんな風に思えるほど冷たくて生気のない手だった。

 その感触が、また僕の心に言い知れない不安を、増大させていく。


「そりゃ心配するよ、話してるだけでも辛いだなんて聞いたら……。それに、こんな冷たい手をしてるのに、心配するなって言うほうが無理だよ……」

「智くんにとっては、そうでしょうね。でも大丈夫だって言ったでしょう? いつものことだから。

 そうだ、智くんにこれを渡しておくわ」


 そう言いながら、春華さんはオーバーテーブルに置いてあったメモ帳を手にとって、僕に突き出した。反射的にメモ張を受け取る。

 これは春華さんにとってとても大切な、彼女が毎日丹精込めて書いている物語が詰まったもののはずだけど……それを手渡される理由が分からなかった。


「これは……春華さんの大切なものなのに、僕に渡していいの?」

「ええ、私は智くんに持っていてもらいたいの。私はこんな調子だから、しばらく書くことなんてできないし、学期末の試験が終わったらまた返しにきてちょうだい。智くんが読んだときよりも、もっと色々書いたから、その感想も一緒にね」

「そういうことなんだ。分かった、大切に読ませてもらって……絶対に感想伝えるよ」

「うん、宜しくね……智くん」


 僕は大切に鞄の中へメモ帳を入れて、もう一度よく春華さんの顔を見る。

 話していることに疲れてしまったのか、彼女は深く目を閉じていた。もう、寝てしまったらしく、呼吸は静かなものだった。でも、顔色は薄く青白く見えて健康ではないことを視覚的にありありと告げてくる。

 その姿を見ているのが辛くて、僕はせめて春華さんが心配してくれた学期末試験を精一杯頑張ろうと心に誓う。


「また来るね、春華さん」


 できるだけ起こさないように、小さな声で言い、心の片隅の言い知れない不安さに後ろ髪を引かれる心地のまま、病室をあとにした。


 ……

 …


 春華さんの調子が悪くなった日から、忙しい日々が続いた。僕の通う高校では、学期末試験が怒涛の勢いで押し寄せてきており、僕も勉強に日々を追われて、春華さんに会えない日々が、ひたすら流れるように続いていった。

 勉強をしていて忙しかったとはいえ、春華さんのことを考えなかった日は、一度もなかった。何度も、何度も最後に見た春華さんの姿を思い出しては、心配で病室へ行こうかと思案したこともあった。

 そのたびに春華さんの提案を思い出して、会いに行くのを我慢したりもした。でも学期末試験も終わって、今日からは春華さんに会いにいける――ようやく、会いにいけるんだ。

 会いにいけるという期待とは別に、当然のことながら、調子が悪いと言っていた春華さんは、大丈夫なのかということが気になるし。あの日の死人のような冷たい手を思い出すだけで、背筋に悪寒が走る。でも春華さんは大丈夫だと言っていたのだからきっと、大丈夫だ。

 不安なことは忘れよう。暗い顔をして春華さんに会いに行ったら彼女を心配させるかもしれない。

 できるだけ心の内にある不安を払拭しながら期待を抱えて、僕は春華さんへ会いに行く前に預かっていたメモ帳を開く。

 預かってから時間を見つけては、少しずつ読んでいたこのメモ帳には、本当に色々な物語が書かれていた。

 春華さんが今まで蓄えていたと思われる物語、キャラクター、思いが詰まって、それが幾つもの物語を紡いでいる。それを大切に、心に刻み付けるようにしながら一度読んだページも読む。

 以前、春華さんに読ませてもらった男の子と女の子の物語の後日談も書かれていて、内なる心を乗り越えたふたりの黄金色に輝くような幸せな日々が刻まれていた。

 それを読んで、僕は春華さんと物語のように幸せに過ごせることもあるのだろうかと、窓から見える空に思いを馳せる。

 春華さんは、未来に希望を持てないと言っていたけど、こんな物語が書けるならきっと彼女自身も希望を持てるはずだ。少しずつ春華さんと一緒に希望のある未来に向かっていけるかな。

 期待に胸を膨らませて、最後まで読んだメモ帳を大切に鞄の中へ入れる。時計は二時を回り始めた頃で、そろそろ病院に行ってもいい頃だろう、思って、リビングの椅子から立ち上がる。

 そこに、電話を告げる機械音声が鳴ったので電話機の前まで行き、受話器を取る。


「智ちゃん!」


 受話器から放たれた母さんからの第一声は、慌てたようなものだった。母さんがこんなにも慌てたような声をするのは、僕が知る限り、初めてのことだ。


「か、母さん? どうしたのさ、そんな慌てて」

「そ、それが……」

「それが?」

「智くん、落ち着いて聞いてね」


 声は、慌てたものから穏やかな、僕を落ち着かせようとするものに変化し始める。しかし母さんの声を聞くたびに、僕は受話器に力を込めて握っていた。

 声の感じからして、いつも呑気にしている母さんとは違い、何か悪いことがあったということだけは、声色から判断できたからだ。

 母さんが次に言葉を放つまでに、悪寒が体中を駆け巡って、僕の思考を受話器から遠ざけようとする。

 聞いてはいけない、知ってはいけない。

 そんな風に、体が拒否する。潜在的な、本能的な恐怖という闇が、体を包み込もうとする。けれど僕は、言い知れない不安から溢れる唾を飲み込んで、言葉を待った。

 心臓からの鼓動は高鳴り、頭をガンガンと揺らし始める。呼吸が狭まり、息が入り辛くなって気持ち悪い。

 そうするうちに、母さんは声を出した。


「春華ちゃんが――」


 聞いた途端に、意識が止まった。

 時間の流れに逆らうように、意識の流れが次の言葉を聞こうとしない。全ての言葉を聞いたわけじゃない。それでも手が震えて、頭が鈍器ででも殴られているかのように揺れている。

 僕がそんなことになっているとは、分からないであろう、母さんはあくまで僕を混乱させないように、穏やかに言葉を紡ぐ。


「――息を引き取ったの」


 春華さんが、息を引き取った。

 単純に復唱するだけなら簡単な言葉に、僕の意識は深く遠くなり始めていた。

 息を引き取る。

 もっと簡単なものに言い直せば"死"という意味だ。

 本能は言葉を理解し、理性は言葉を理解できないまま、僕の目の前は急激に黒く染まって暗転していった。



 転編「開花の華」 part2 終わり


 結編 プロローグ に続く

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