夢の続きの物語
にゃべ♪
第1章 それはあの日見た夢から始まった
第1話 変にリアルな夢
オレは龍元ヒロト、17歳。その筋では有名な格闘王タダシの息子。
だけどオレはその父親から何も受け継いじゃいないっぽいただのヘタレ。
体力も格闘…いや、戦闘センスも至って普通。普通って言うよりちょっと低いくらい。
幼い頃は父さんに格闘技を教えてもらってたりもしたけどオレには特に才能はないみたいで父もすぐに跡を継がせるのを諦めた。
自分としてもあんまり格闘技とか好きじゃなかったしこれはこれで良かったと思う。
それから父さんは格闘技の世界を制覇して今は冒険家として活躍している。
活躍って言うか…冒険は趣味の延長みたいでそんなに儲かってはいないみたい…。
冒険家って冒険するのもそうだけどその後の報告の能力も試されるんだよね。
冒険の記録を本にしたり、講演をしたり…そう言うの、父さんは苦手だから。
今は格闘家をしていた時の資産で食い繋いでいる感じ。
実績もあるし格闘家時代のグッズはまだ売れているみたいだし…それで家族の誰も文句は言わないんだ。
今頃父さんは南米のジャングルの辺りを冒険しているはず。
いつも父さんは行き先も告げずにいきなり旅に出るんだ。
もうすっかり慣れてしまったけど最初の頃はやっぱり寂しかったな。
でもどんな冒険をしても最後はちゃんと帰ってくるからいつしか心配もしなくなったんだ。
そんな訳で父さんの能力を何も受け継がなかったオレはのほほんと高校生活を楽しんでいる。
高2ともなるとやっぱり将来の事とか考えないといけないんだけど、今は努力して上を目指すというより今の実力で出来るレベルでいいんじゃね?って感じ。
特に目指したい夢とかもないし流れに流されて行こうかなーって思っている。
友達もみんなそんな無気力な奴らばかりで気が合ってより一層堕落一直線だった。
「ふぁ~あ」
今日もまた色々あって寝る時間になった。うん、そろそろ寝よう。
ポチ
部屋の電気を消しておやすみモード。
さて、今日は何の音楽を聴きながら寝ようかな?
オレは手慣れた手つきでスマホの音楽再生アプリをなぞっていく。
「よし!君に決めた!」
今夜のおやすみBGMは少し昔のお気に入りのアニメサントラ。
心地良い音楽がオレの耳をくすぐっていく。
うんうん、いい感じ。音楽と共にアニメの名シーンが蘇ってくるよう。
これで今夜も安眠間違いなし。
大好きな音楽に見守られながらオレは静かに眠りについた。
…
すぴー
…気が付いたらオレは夜の街にいた。
これ、多分夢だな、うん。
その街には人の気配がなかった。
誰もいない街を一人彷徨う夢って最近よく見るんだよね。
だから今日もいつもの夢の続きが始まったと、そう思っていたんだ。
オレがその無人の街を適当にぶらついていると建物の影から動く影が見えた。
この手の夢で自分の知らない他人が出て来るなんて初めての事だったのでオレはつい興味を持ってその影を追いかけた。
「ちょ、待てよ!」
ドテェッ!
この影は始め思いっきり走っていたがやがて盛大にコケた。
えっ?まさかオレの声を聞いて?
それはよく分からない。
取り敢えずそいつに追いついて話を聞いてみよう。
ハァハァ…。
夢の中で走って疲れるなんて今までそんな事はなかったのに今日は何故か肩で息をしていた。
夢の中ではいつも感覚は殆ど感じないのに今回はやけにリアルだ。
その事に多少違和感も感じていたけどそう言う夢もあるんだろうって事で自分を納得させていた。
息を切らせながらも何とか影に追いついたオレはその正体を確認する。
オレが人間だと思っていたその影はよく見ると人間ではなかった。
「に、人形!」
流石夢ッ!現実では起こらない事が平気で起こるッ!
オレの前に現れたのは人ではなく人形だった。
人形と言ってもそんな小さいものではなく全長1mくらいの小さな子供くらいの大きさの人形だった。
造形的には若者というより中年…顔は歴戦の勇者のような渋い顔で父さんと同じくらいのガッシリした体格、スーツを着ていてまるでその姿は執事のようだった。
自分の見る夢にしてはセンスが良いな…オレはその人形を見て素直にそう思った。
その人形はオレの顔を見るといきなり肩を震わせながら涙を流し出した。
おいおい、随分凝ってるなコレ。あ、夢か。
「ずっとこの時が来るのを待っていましたよ!」
ひと通り涙を流したその人形はいきなり喋りだした。
え?何?この人形オレを知ってるの?
夢とは言えこの展開にオレはちょっと引いちゃったね。
「やべぇ…」
オレは関わっちゃまずいと思いこの場を去ろうとした。
けれど人形の手が素早くオレの手を掴んでしまいそれは未遂に終わってしまう。
な、何だ何だこの人形!キモッ!
「お願いです!どうかこの世界を救ってください!」
「は?」
おいおい、夢とは言えベタな展開だぞコレ。
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