06絡

 「ここに、ひとつの言葉がある。僕はこれを可愛いものだと定義する。」

 「可愛さとは個人の感覚によるもののように感じるが、言葉となればそれは別だ。それは今のところ、そしてきっと未来永劫言葉でしかなくて、言葉でしかありえないもので、個人の感覚以前に定義として可愛いものであるとされているからだ。」

 「言葉としての形容は言語によるものではなく、日本語ならば可愛いが英語だと可愛くないなどといったことにはなりえないし、なってはならない。」

 「本来言葉と言語は切り離されて定義されるべき事柄で、その可愛さは文字や文法によらないはずで、兎にも角にも英語だろうが日本語だろうがエスペラントだろうがドイツ語だろうが変わらない。可愛いのだ。僕がそう定義したから。」

 「言葉を定義するということにおいて、ただひとつ守られなければならないのは、世界がその言葉によって征服されなければならないということ。」

 「僕がいま定義した可愛い言葉を今僕が使ったところで君たちには可愛さが伝わらないし、そもそも言葉かどうかもわからないはずだ。しかし、その言葉をすべての有象無象(空を飛ぶものを含む)が認識したら、僕がその言葉を世界に放っただけで可愛いと感じるはずだ。」

 「そして僕は叫ぶだろう。」

 「」

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