外伝〜優太幼少期②〜

 この話は優太が小さい頃につけていた日記を元に作者が作った話である。


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 僕は朝起きたら、森の中にいました。


「……ええ!?」


 あれ、確かに寝るときは家のベッドで寝たはずです。いえ、寧ろ立ったまま寝ることなんて師匠には出来ても僕にはできません。


「ここは……どこなの? パパは?」


 そう聞いてみても、誰も答えてくれません。


「誰か! 返事してよ!」


 そう叫んでも、返事はありません。


「誰か……。」


 一人ぼっちです。怖いです。僕は泣きたくなりました。


「ふぇ……ふぇ?」


 そして遂に僕の目から涙が流れだそうとした時、僕は足元に何かがあるのに気が付きました。

 見たところ、リュックと二枚の紙のようです。


「なに……これ。いつの間に?」


 さっきは無かったはずのもの。それが急に足元に出てきたら、泣くのも忘れて驚くのが普通です。


「なんだろう……。」


 僕は紙を広げて中を読んでみました。一枚は地図で、もう一枚は手紙のようでした。

 僕は手紙を読んでみました。そこには……。



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優太へ。


今から野外訓練だ。今お前は伊豆にいる。そこから走って家まで来い。なーに、頑張れば2日で帰ってこれるさ。リュックの中には食料と水が入ってる。それで頑張れ。地図には今お前がいる場所と、家までの道のりを書いておいた。優しいだろう。じゃあ、頑張れ。



優しい師匠より


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 何処か優しいのか聞いてみたいところだけど、そんな事を師匠に聞いたら大変なことになってしまうので、我慢することにしました。

 地図を見てみると、真ん中に凸のマークがあり、そこから赤い線が伸びていました。僕が回ってみるとその凸マークを中心に地図が回りました。……どういう仕組みになっているのでしょうか?


「とりあえず、早く帰って温かいご飯が食べたいです……。」


 動かなければ帰れないので、僕は赤い線に沿って歩き始めました。




〜side out〜



〜神野秀太郎視点〜


「ほう……歩き出したか。流石俺の息子。」


 今オレは息子がいる所の一番近くの木の上に立っている。友に『もし泣き出して動かなかったら連れて帰ってこい。』と言われたからだ。

 初めは泣き出しそうになっていたが、できれば連れて帰りたくないオレは、動き出した息子を見て少し安堵した。


「さて……『もし動き出したら、アイツを尾行して危険が迫ってたらバレないように排除しろ。今回は体力の為の訓練だから、戦闘はさせなくていい。』だっけか? 全く、俺がやらなくたっていいだろうが。厳しいんだか甘いんだか、わかんない奴だな。」


 そう独りごちながらオレは視界にぎりぎり入る位置に息子が来た時に動き出した。全く。ステルスミッション苦手なんだよ。



〜side out〜



〜優太視点〜


 しばらく歩いたら僕は舗装された道に出ました。ここを右にしばらく歩けば街に出るらしいです。

 僕はもう一度地図を確認したあと、歩き始めました。途中、喉が渇いたのでリュックを開けて中身を確認します。

 中にはこんなものが入っていました。



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水2L×2

カ○リーメイトチョコレート味×10箱

プラスチック製コップ×3

腕時計


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「腕時計だー。」


 僕がよく付けてる腕時計が入っていました。早速つけます。

 すると、心なしか体力が回復していく気がしました。やっぱりいつもつけているものをつけているのといないのとでは、違うみたいです。


「あ、お水のむんだった。」


 僕はリュックからコップを出して近くの岩の上においておき、リュック中からお水の入ったペットボトルを出しま……


「重い!」


 と、リュックの重さからは考えられない程、ペットボトルは重く、驚いてしまいました。

 寧ろリュックのほうが軽いまであります。


「このリュック、どうなってるんだろう……。」


 帰ったら調べてみることにしました。

 コップに水を注いで、飲みます。生き返るような気がしました。

 コップと水をリュックにしまってまた歩き始めました。


 時間は8:26を指しています。早く行かなきゃ……。



〜side out〜



〜神野秀太郎視点〜


「やっと腕時計をつけたか。」


 オレは今息子から100m離れた木の影にいた。あの腕時計はただの腕時計に見えて、実は『体力自動回復特大』の効果がついた、マラソン選手にとってだけでなく、みんなが喉から手が出るほど欲しくなるような腕時計だ。


「お、水を出したな。リュックの異常さに気がついたかな?」


 あのリュックはアイテムボックスを改良したもので、何を入れてもリュックの重さは変わらない優れものなのだ。


「お、歩き出した。」


 オレは息子の後をバレないようについていった。



「もしもし、警察ですか? 今不審者が……。」

「……。」


 オレはその場から逃げ出した。



〜side out〜

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