ハナミガミ 〜いくつものおとぎ話〜やがて一つの物語〜

ケラスス

第1話 プロローグ✿ハル

 閲覧に心から感謝です

 楽しんでいただければ幸いです。


 おとぎ話

 昔話や伝説などの民話、御伽という風習そのものは別名・夜伽=通夜にもあるように、古くからある徹夜で語り明かす伝統に基づいている。

 その晩に話される話を夜伽話、転じて御伽話とされるに至った。


 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△



 俺の仕事は【


 酒と花と芸術を愛する30歳

 親しい友人達からは【ハルちゃん】で通っている。


 もう結構いい年だよ。


 映画が好きな子供時代。

 小さい頃からの親友と二人で日が暮れるまでみていた。

 そんな俺は、ある主人公がギター演奏するシーンで衝撃にうたれた。


 「……かっこいい」


 無理いって10歳の誕生日にエレキギターを買ってもらった。


 普通子供のヒーローは、五色の全身タイツの人達。

 怪獣をたおす宇宙人だった。

 俺のヒーローは歴代のギターヒーロー達だったわけだ。


 学生時代はバンドで弾いていた。

 その後、ひょんなことから今も腐れ縁というか、今は父親がわりのような?

 おせっかいな師匠にひろわれしごきの日々を過ごした。

 全然弾き方も違うクラシックギターをしこまれた。


 師匠についてからは演奏の旅。

 俺も今やそれなりにギターならなんでもござれな、演奏屋になった。


 しかし、音楽で食っているというのは聞こえはいい。

 だが実際は何一つ夢もみてはいない。

 ちゃんと春には税金の申告したり、いつも領収書はとってある。


 毎月売り上げいくらで、いくらの出費だとか考えてはいる。

 普通に仕事なので、世間一般の人とさほど仕事意識は変わらない

 ……はず。


 だがこの不景気。

 仕事のない俺は実家に寄生し、いつも貧乏なのだ。


 オンラインゲームは無課金ガチ勢!!


 ちなみに独身!だ!


 けっして、そこまでブスなわけでもないし!

 しゃべらなきゃ馬鹿がみえないからいい男との評判もある!!

 そしてなんと以前は婚約者もいた!

 ……だがその話は別の機会にする。


 そんな俺のまわりには。

 なぜかただれた仲の友人たちばかりが集まる。

 いつも騒動や事件や怪談的な厄介ごとに巻き込まれてきた。

 それでも、その時の俺は久々に静かな日常を過ごしていた。

 まさか急に神様やら怪物やらに関わってり、秘密だらけの恐ろしい親戚と海外に行ったり、厄介な事になるとは思ってもいなかった

 そんな話だ。


 ✿✿✿✿


 今年も春が来た。


 桜の名所の大きな公園。

 この広い公園はその昔殿様がすんでいて、

 桜の木が2000本以上ある。


 城下町には古く文化的な建物が多い。

 それは学校、教会など様々。

 街全体が神社や仏閣で固まっている地区もある。

 それなりの観光地にもなっている街。


 四月後半からゴールデンウィークにかけて、この桜の町は花見のお祭りでごった返す。


  一度はまともなサラリーマンになり東京で暮らしていた。

 ある出来事をきっかけに、心身ともつかれはて俺は会社を辞めた。

 マンションを解約し、生まれ故郷のこの桜の町に戻ってきた頃。

 結局元の演奏稼業に戻ってしまったのだ。


 その日、春に浮かれて一人祭りへと向かうことにした。

 家を出て新図書館を眺めながら外堀を歩く。

 大きな門を潜り桜のトンネルを歩いた。


 天守閣をすぎて坂を降りる。

 大きな蓮池の後ろの林を入り、柵に囲まれた場所。

 巨大に根が盛り上がったイチョウの木に話しかける。


 「久しぶりですね。

 少し休ませていただきますよ」


 挨拶をすませてまるでおおきなベンチのような、木の根に俺は腰掛ける。


 薄汚れた白いギターケース。

 楽器を取り出し、ジャケットの胸ポケットから音叉を取り出して調弦する。



 瞼を閉じて背筋を伸ばす。


 ー 主よ、人の望みの喜びよ ー


 バッハの教会カンカータを、風や木々の音に合わせながら。


 力強く優しく奏でていく。


「悲しいおと……」


 耳元で少女の声が聞こえた。

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