第3話 モバイルギア
「神沢さん、【サークル7】ってどんな組織なんでしょうね?」
安藤光雄は神沢優の顔を
黒い瞳が優しく見返す。
「たぶん、犯罪組織の下部機関でめぼしい人材をスカウトする部門、もしくはサポーター、つまり下っ端を集めるものでしょうね」
神沢優はこともなげに、しかも自信満々な様子で答えた。
さすがにカリスマ公安オタクである。
だが、予想が当たってるかどうかは定かではない。
「神沢少佐の予想はそういうことですか。とりあえずの僕らの戦略目標はどうしましょうか?」
いつもの【犯罪捜査コミュ二ティ】のノリになってきた。
【ムーンウォーカー】少佐こと、神沢優の指示でいつも僕らは犯罪捜査を開始する。
といっても、ネット上のアメリカ発の大手検索エンジン【サークルライト】を使う、あくまで机上の捜査である。
実はそれが結構、当たってしまって、現実の事件をいくらか解決しまったりしていた。
それゆえ、【ムーンウォーカー】少佐である神沢優のカリスマ性はネットで伝説となっていたのだ。
ちょっとワクワクしてきたな。
神沢優は流線形の未来型デザインのメガネのようなものを、腰のバックから取り出してテーブルの上に置いた。
「まずは、この【モバイルギア】をつけてくれるかな。我が神沢潜入捜査隊の基本装備だ。モバイルネット接続できて通信機能もある」
「これって【サークルライトグラス】ですか?」
「まあ、そんなものね」
安藤光雄は大手検索エンジン【サークルライト】が、最近、発売したスマートグラスのようなメガネをかけてみた。
【モバイルギア】という名前らしいが、モニターに何かの数字のようなものが写っていた。
小さな画面のようなものもみえ、そこに緑色の光点がふたつ見えた。
「神沢少佐、この緑色の光点は現在位置ですか?」
「そうよ。敵が来たら、赤色の光点が現れるわ」
「なるほど、敵っていうのは?」
「敵は敵よ。状況が変わったら、また指示をだすわ。では状況を開始する!」
「了解です!」
安藤光雄は短く答えた。
神沢優はテーブルを立って、紅色のサングラスをかけなおした。
そのまま、タイムトンネルのような紅い照明の廊下を通って7番スクリーンに入る。
そこはプライベートルームのように貸切になっていて、【サークル7】の説明映像が流れるということになっていた。
ふたりは椅子に腰かけてしばらく待った。
スクリーンが少し左右に拡大して映像が写りはじめた。
それによると、【サークル7】はネットのコミュ二ティサイトを基本として、専用のモバイル端末【サークルライトグラス】によって通信を行うらしい。
それじゃ、この【モバイルギア】と全く同じじゃないかと思った。
その時、安藤光雄の【モバイルギア】のモニターに、赤い光点がひとつまた、ひとつと増えていった。
そして、あっという間に赤い光点が無数に増殖していく。
「神沢少佐、これは―――」
「周りは全部、敵よ」
神沢優は安堂光雄に拳銃を手渡した。
「発砲許可は取ってあるわ。公安の訓練プログラムB-2-7で対応してね。私も公安なのよ。公安の安堂光雄さん」
彼女は席を立った。
周りの客たちも亡霊のように立ち上がる。
手には拳銃、重火器、ブレードソードなどの武器を持っていた。
「……B-2-7、強襲要撃一点突破か。なんてこった!」
「状況開始! 幸運を祈るわ」
神沢優は一瞬で通路へと舞い降りて全力で走りだした。
安藤光雄もそれに続く。
用心のために、
だが、赤い照明のある廊下に出ようとした瞬間、
壁がみるみるうちに穴だらけになっていく。
射撃がやんだ一瞬に、思い切りよく神沢優が床を転がっていった。
転がりながら、
爆裂音と共に機銃の打ち手は沈黙。
爆煙の中をふたりは同時にダッシュを開始する。
その頃には、後ろからふたたび機銃掃射が来ていた。
間一発、壁に隠れてやり過すが、そこからもう一度ダッシュした。
エレベーターホールに辿りつくが、中央のエレベーターが開いて、そこには重装備の数人の兵隊が現れた。手にはやはり自動小銃がみえる。
「……まずい」
安堂光雄は自分の死を覚悟した。
「出でよ、
神沢優は不思議な呪文のようなものを唱えた。
安堂光雄の眼前に、黒い鎧をまとった鬼が現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます