第45話 神の呪い
エルフはマーメイドとの戦争に勝利した。
戦利品はないが被害もほぼ皆無という、完全なる勝利であった。
その影で、エルフたちはマーメイドらが崇める神によって呪われた。
エルフたちは呪いの存在に気が付くことは出来なかった。
その呪いはあまりに自然で、エルフ族の天才、【樹海の苗】ピラクスをしても、呪いの気配すら感知できなかった。
戦争から数日が過ぎた。
戦勝の高揚感も終わり、日常が戻ってきた。
だが誰も呪いには気が付かない。
更に時が流れた。
呪いは確実にエルフの社会に蔓延していたが、誰も問題にはしなかった。
更に長い月日が過ぎ去った。
呪いはエルフ族を完全に蝕んでいたが、それでも呪いに存在に気が付くことは出来なかった。
ある日のこと、エルフの若者たちが雑談をしていた。
「俺、結婚したんだ」
「おめでとう。子供は生まれたかい?」
「まだだよ。でも男の子が欲しいな」
たわいもない話であった。
だがそのエルフの望みが叶うことはなかった。
永遠に。
※
神がマーメイドたちに告げた。
「神罰は成った。これによりエルフ族は、世界からその姿を消すだろう」
マーメイド族の王であり、神に仕える最高司祭でもある【珊瑚の女王】イオナが聞いた。
「エルフたちになにも変化はないようですが。神様はいったい何をされたのですか?」
「わたしはこの世界の創造主である。たとえ罪深いエルフといえども、傷つけることは出来ない」
神の言うとおり、エルフたちが傷ついた様子はなかった。
しかしそれでは、いったいなぜ神罰は完遂されたと宣言したのかがわからない。
「どういうことでしょうか?」
「生きとし生ける者すべてが所有する権利と義務を、エルフたちは果たせない。果たせなくした」
「どのような意味でしょうか?」
「我が子よ。簡単な言葉で、説明してやろう」
神は諭すように言った。
その言葉に、マーメイドたちは神の強大さを思い知り、頼もしく思うより先に背筋が凍りついた。
どんな力で殴るよりも、どんな策で陥れるよりも恐ろしい、全てを滅ぼす神の怒りである。
「エルフ族にはもう、子供は生まれない」
それは間違いなく、エルフ族の緩慢な絶滅を意味していた。
《お前は神を頼らない立派な男だ。神に恨まれなかったらもっと立派だった》
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