Effective Project
モジャンコフ・ヴィッチスキー
プロローグ
夏の話
これは、夏の話だ。
夏の、とてつもなく暑い夏の、たった1週間足らずの出来事だ。
たぶん、誰も信じられない。まったく関係ない人間がこの話を聞いても、極めて微妙な表情で、そうなんですか、すごいですね、以外のセリフを吐くことなんて、ほとんど不可能に近い。
と言いながら、俺には信じがたい話だったか? というと、その答えはノーだ。
俺は信じていた。いや、ゼッタイに事実か? と訊かれたときにイエスと答えるだけの自信もないし、ここでそれを証明できる手段もない。
幾人かの友人や、関係者に事実だった、と証言してもらうことはたしかにできるだろう。
けど、それはあまりに意味がない。
俺たちは嘘をつくからだ。
それは、あいつも言っていたことだ。
結論から言えば、俺が誰かまったく関係ない人間に100%この話を信じてもらうこと自体は、不可能だと思っている。
俺にだって、それくらいはわかる。
だから、信じてくれとは言わない。
でも、はい、そうですか、すごいですね、とは言って欲しい。
嘘だろ、だとか、ありえない、の前に、お世辞でも、軽蔑でも、同情でもなんでもいいから、俺にそれと悟られないようにひとこと「すごい」と言って欲しい。
俺はそれだけで、なんだか満たされた気持ちになれるのだ。
127歳まで生きるためには、精神の充足だって必要なわけだ。
精神の充足。
つまるところ、
ただ、
そのため だけ に、
俺はいまから、
この話をはじめる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます