第28話 動画の内容
「えー、今日は、2016年、1月18日、月曜日。ここには、俺を含めて23人の高校生がいる。この動画を見ているということは、こっちの世界にいるということだ。だいたいの事情は分かってくれていると思うから、端的に言う。フジナカマコトに騙されるな! あいつの言っていることは嘘だ。確かにあいつは、この世界のことをいろいろ知っている。しかし、1週間後にドアが開くということや、あいつ自身が外の世界で暮らしているということは嘘だ! フジナカマコト、お前がもしこの動画を見ているなら、ひとつ提案がある。本当にコンビニの外に住んでいるなら、いまからどこか最寄りのスマイルバードに行ってみろ。そして、中の高校生に自分の姿を撮影させてネットにアップさせてみろ。その動画がアップされれば、俺はこの動画を削除し、1週間おとなしくしていよう。でも、できないはずだ。だってお前はコンビニの外になんていないからだ。お前はコンビニの中にいる。お前の本当の狙いは、みんなをおとなしく動かない状態にして、自分ひとりだけ積極的に動いて、この世界から抜け出すということだ。だから、この動画を見ている高校生のみんな。頼むから騙されるな! このままじゃ何もせずに1週間が経って終わりだぞ。永遠にドアは開かないんだ。その、お前が立っている、その、コンビニが死に場所になるぞ。その中にある食料が尽きたら死ぬだけだ。あと何日生きられる? それでいいのか? 自分の力で、生きるために、戦ってみないか? 俺は、みんなに仲間になってほしい。助かるのは7人と映像で言っていたが、7人じゃない。みんな助かる方法がある。俺も、この世界のことはよく知っている。詳しくは後で公開する『カクヨム』の俺の小説ページを見てくれ。カタカナで『オオイシタツル』で検索すれば出てくる。俺がこの世界に詳しい理由を書くから、信じてもらえるはずだ。そして、これから見てもらうのが、この動画のメインだ。生きるためには戦わなきゃならない。戦う方法を動画で伝える。バーコードリーダーはみんな持っているな? これを使う。自分のもともといた店舗のものでなければ意味は無いから注意してくれ」
オオイシタツルは、そこまでをまっすぐカメラ(おそらくはスマホでの撮影だが)の方を見ながら、よどみなく、はっきりと喋った。
そして、右手にあるバーコードリーダーでアイスクリームを読み取った。ハーゲンダッツの抹茶味だ。
オオイシの右手が光った。
光が収まると、オオイシの右手は変形し、丸いカップになっていた。アイスクリームのカップがそのまま大きくなって、腕の先についたような感じだ。
先程までの堂々とした演説とのギャップがあり、なんだか、少しだけマヌケだ。
「商品を読み取ると、腕が、その商品を原型とした武器になる。この場合、抹茶のアイスがそのまま武器の形になっている。『そのままタイプ』だな。他にもその商品の一部分に特化して武器化する『一部タイプ』や、防御に特化した『防御タイプ』などがある。ただし、どんな武器であっても、一度変形したら、『プロデューサー』を攻撃するまで元に戻すことはできない。『プロデューサー』というのは、ヒウラタクロウがバケモノになった姿だ。今から呼び出す」
そう言ってオオイシは空いた左手でスマホを操作した。
「『カクヨム』には自分のアカウントがあるはずだ。そのアカウントで誰かの小説に星を入れてみてくれ。その星の数だけプロデューサーが来る。今回は1匹出すぞ。ちなみに、どんな奴が来るかは、その小説の文章の内容による。ただし、文字なしの小説にだけは星を入れてはいけない。入れると『砲台』が来るぞ。あいつだけは、勝てない。」
砲台。あいつだ。首長のバケモノ。口の中に銃がある。
「特に強さに法則はないから、いろいろためしてみるといい。……来たな」
オオイシは奥を見つめた。
カメラがオオイシから外れて動く。
映し出したのは、ロープレのゲームに出てくるような、いわゆる「魔王」の姿をしたバケモノだった。やはり顔はヒウラタクロウである。
身長は2メートル以上ありそうだ。ごつくて黒い体に、大きな羽根がある。しっぽもある。十分に異形であるが、今まで見た「プロデューサー」の中では最もまともだった。ちゃんと手がある。足がある。ただし、画面越しでも迫力は凄まじい。
「じゃ、いきまーす」
オオイシは、ボウリングで自分の番が来たぐらいの軽さで宣言し、「プロデューサー」の方へ歩き出す。
徐々に距離が縮まる。
「グオオ!」
魔王Pは長い爪の生えた右手をオオイシに振り下ろした。
さっとかわしながら、オオイシは、左手で右手のカップのフタを外した。
カップの中では、緑色の何かが渦巻いて光っていた。
その右手を、魔王Pの顔に突き出すと、カップの中身が出た。緑色の吹雪だ。
「ゴオ」と、音がして、次の瞬間には魔王Pの顔が凍りついていた。
すっげ。
「ハーゲンダッツの抹茶はかなり強いからオススメだ。でも、一度武器化した商品は、同じリーダーでは二度と使えないから、よっぽどの強敵でなければ使わずに取っておいた方がいいと思う」
光った後、右手は元に戻った。
「こんな感じでプロデューサーを倒すと、名札が手に入る。名札を読み取ると、星が増える。これを繰り返して、星を増やしていくわけだ」
落ちている名札を広い、オオイシは自分のリーダーで読み取った。
その後、その名札を後ろの高校生の一人に渡した。彼は、自分のバーコードリーダーで、それをピッと読み取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます