無限コンビニ・デスゲーム

近藤サトル

ナゾだらけの世界

第1話 あまりにもナチュラルに突入

 コンビニを出ようとすると、自動ドアが開かなかった。故障だろうか。


 店員に声を掛けようとするが、レジに誰もいない。商品の入れ替えでもしているのかと、店内を見回す。いない。そういえば客もいない。

 おかしい。さっきまで普通に客がいたはずだが…。すべてが突然消えてしまった。いやいやそんなアホな。


「すいませーん」


 レジの奥に向かって叫んだ。数秒待つが返事はない。


「すいませーん!」


 声を少し大きくする。しかし、スピーカーから流れるJPOPが響いているだけで、人の反応はない。なんかおかしい。


急激に不安になる。


「すいません、誰かいませんか?」


 店内を歩きながら店員を探す。もはや店員でなくてもいい。誰か人はいないのか? 自分の行動がおかしいとは分かっているが、この不安な心をまずは落ち着かせたい。人を見て、安心したい。トイレも覗くが、空だった。

 1分前まで普通だったじゃないか。こんな急に、特定の範囲から人が消えるって、あるか?

 本棚の前をしばらく往復しながら考える。考えてもわからない。

 もう一度自動ドアの前に行って、センサーに向かって手を振ったり、ジャンプしたりする。ドアは開かない。


 これって、閉じ込められちゃったってこと? 徐々に、心臓の鼓動が早くなる。

 ドアの間に指を入れ、こじ開けようとするが、まず指が入らない。その指が震えている。落ち着け。

 外の人に助けを求めてみるのはどうだろう。


「誰か、開けてください!!」


 ドアを拳で叩いて叫ぶ。


「誰か!開け…」


 気付いて血の気が引いた。


 外にも人がいない。車も通っていない。


 目の前の車道は、深夜でも車がそこそこ通る国道である。夕方の4時台にゼロってことはない。この時間多いチャリの中高生も、通行人すら見当たらない。


 あっさりと、あまりにもナチュラルに変な世界に突入してしまったけど、これって異常事態なのかもしれない。


 僕は走った。レジを飛び越えて、従業員のスペースに入る。


「誰か!」


 奥の倉庫や、従業員用のトイレも見回す。


「誰か!」


 通用口のドアが目に入る。ここからも外に出られるはずだ。ノブに手を掛けるが、回らない。カギは、開いている。念のため、何度かサムターンを回して試すが、ノブは動かない。


 僕は、誰もいないコンビニに閉じ込められた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る