単身神風

旺璃

事の起こり

漁火

 耳の詰まったような、ぼんやりとした世界の中に、ぎしり、と骨の軋む音が鳴りました。つい先刻まで勇ましく海を裂いていた鉄の塊が、遠くないところでもうもうと黒煙を立てて居ります。少し前に感ぜられた、高いところから落ちる感覚を思い出し、其れが大層不愉快でしたので、拙は少しでも気を紛らわそうと、煙の間からちろちろと煌めく炎を眺めておりました。

 程無くして、対照的な、小さく白いお船がお迎えに来ました。其処には海へこぼれた幾つかのひとの破片と、今にもしんでしまいそうな、暗い顔をした兵卒が一人居りました。此の小さなお船だけで、事は足りたようでした。拙はのろのろと水から上がり、簡素な報告を済ませて、遠足から帰る気分で揺られて行きました。

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