約束

七彩聖夜

幼いころの...

「なー君!」

「なんだよ。」

 明(あかり)は、公園の休憩スペースで僕の横に座りながら言う。

 テーブルの上に置いたノートが風でペラペラとめくれる。

「なー君は、将来の夢が小説家さんなの?」

「え?まぁ、そうだよ。」

「そうなんだ!」

「うん。でもさ、それがどうしたの?」

 明の目線は僕のノートの文字に注がれる。小学校の低学年の僕らでは、あまり学校で見ない大学ノートにびっしりと書かれた僕の文字をみたあと、スッと空を見上げる。

「私ね、自分のお料理のお店を開きたいの!」

 唐突に告げた明の顔をまじまじと見る。

「でね、なー君!私、お店開いたら絶対に一番最初になー君にご飯食べてもらいたいの!」

「ふーん。で?」

 視線をノートに戻しながら鉛筆を握る。

「それでそれでね!なー君が賞とかとった小説ね、私が最初に読みたいの!」

「それ、ただの明のわがままじゃん。」

「いーの!!だからね、約束。」

 小指を立てたまま勢いよく僕の前に突き出す。

「約束って...何をだよ。」

「私が、お店を立てたら一番最初になー君に食べてもらう。なー君が賞とかとったらそれは最初に私が読む!約束。」

「はぁ....はいはい。」

 明の小指に自分の小指を絡ませる。ギュッと小指を曲げると目を合わせて言う。

「「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーますっ!指切った。」」

 二人の声と同時に二人の手が離れる...。

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