ねむいのねむいの飛んでゆけ

片坂 智人

プロローグ

 わたしは寝ているみんなを夢から覚ますお仕事をしています。

 夢から覚めるのはとっても簡単です。ある呪文を唱えるだけでいいのです。

 でも、夢の中のみんなはなかなか呪文を唱えてくれません。呪文を唱えるどころか、ブーブー文句を言う人だっています。

 それでも、寝ている人は起きなくてはいけません。学校に行ったりお仕事に行ったり遊びに行ったり、みんなとっても忙しいので、本当は夢を見ている時間なんてありません。

 わたしがお仕事をしないと、みんなが後で困ってしまいます。だからわたしは一生懸命頑張ってお仕事をしています。

 たまにはお仕事のことを忘れて一緒に遊んでしまうこともありますが、わたしはまだ小さな子供なので、誰かに怒られたりはしません。心のなかであちゃーっと思ってそれで終わりです。


「あ、もうこんな時間!」


 わたしは、今日もみんなの夢の中へ、お仕事にお出かけします。


「今日はどんな人と会えるかな?」

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