十二月の僕

住宅街の細道は

殺伐とした路面の上に

早くも冬が漂っている

鼻を抜ける朝のにおい

排他的な家々の窓


吐息の白煙眺め見て

やがて空気に溶け行く様を

雪の儚さに例えて

一人寂しく冬を歩く


空には灰の雲がかかり

雪は無言で降り落ちる

憐れむべきは雪である

僕はゆっくりと目を閉じて

呼吸の深さを意識した


絶望無くして我々は生きられない

これは決して社会悪を叫ぶのではない

個々人の内心に絶望はしかと望まれるのである

八月のノスタルジアは摩耗して、昨今は朝冷えに脅かされる

こういう事を思うのは、まさに我々の業である

超自然をも描写して、ロマンチストになりたがる

ロマンがロマンたる上で、絶望はやはり望まれるのだ

楽しい時には絶望を探し

苦しい時には希望をうらやむ

もはや憐れみの余地もなく

快楽的な自己中心の

自業自得を夢見る人は

しきりに自己を鑑みて

可哀そうにと憐れんで見る

憐れむべきは雪である


雪は無言で降り落ちる

それらはやがて地に溶けて

下水をどこかへ流れると

また蒸発し、雲へ行く

繰り返される無言落下

雨は疎まれ、雪も同じ

または好かれの人任せ

雨や雪には自我も無く

ただ漫然と降っては昇る

どうしてそれを眺め見て

憐れむ事が出来ようか

いかに我々人間が

意志介在を出来ようか

憐れむべきは雪である


……アッ。

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Stormersの詩集 stormers @stormers

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