DWT

ヒマラヤ山脈

Adoration/M

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 思いおこす。


 そう、これは原初の記憶。

 騎士が志した目標地点。


 ■


 しゃがれた老婆がからからと笑う。

 枯れ木を思わせる細腕。

 皮と骨につくられた四肢。

 がしゃ髑髏どくろを思わせる老いた肉体は、まるで人間のものとは思えない。


 だけど私は好きだった。

 頭を撫でるてのひらは、弱々しいが故にしっかりと暖かく、

 おでこにれた唇は、乾いているが故に愛情に満ちていた。


 抱く感情は、恋に似ていたと思う。


 それを確かめる術はない。

 物心ついたときには、それはもう遥かに高尚なものへと昇華されていたし、

 冷静に自分を省みれる頃には、彼女は既に私の傍には居なかったのだ。


 だからこの気持ちは敬愛なのだろう。

 親愛や友愛とはまた別のもの。届かないことを前提とした異質の愛情。


 ……けれど、間違いなく言えることが一つある。

 もし仮に、彼女が私と同年代で、血の繋がりなどなかったならば――――きっと私は求愛していた。

 年老いていて尚、彼女には魅力があった。若い頃ならきっと素敵な、魔性のお姫様になっていただろう。


 そんな益体のない仮定は存在しない。


 残ったものは透明な信仰心。言い表せない憧憬のカタチ

 よそ見はしない。それは裏切りにあたるから。

 誤魔化しはしない。それは侮辱にあたるから。


 私は、彼女を幸せにしなければならないのだ。


 ■


 ――――謀反のための恭順を示す。

 は輝きを増す、復讐の騎士道オブリジエ

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