クール・ジャパン・ウォー

本田セカイ

序章

プロローグ

 二〇XX年、日本の全オタクを震撼させる法案が成立された。


 その名も『非実在不健全創作物規制法』、通称『THE・不潔法』

 文字通り世のオタクの心の支えである二次元世界を封殺した法律である。

 まさに慈悲無しと言うべきこの政府の決定にオタク達は阿鼻叫喚、某掲示板はたった数秒でサーバーダウンし、非難の意を込めて全世界から政府サイトがハッキングされ大混乱となった。

 無論それだけでない、連日全国各地で法案の廃止を求めるデモが行われ、時には暴徒化したデモ隊が警察と衝突するなど、混乱に混乱を極めた事態となっていく。

 大人しいオタク程、怒らせた時が怖い――しかし表現の自由というものが声高に叫ばれる昨今、アニメや漫画、ゲームというものは必ずしもそれに含まれていない部分もあり、まさに『行き過ぎ』が犯罪の助長を危惧させ、世論が一抹の不安を抱き続けてしまった結果がこの法案だとも言えるだろう。

 ――つまり、世間はこの法案に対し大なり小なり否定的ではなかった、いや寧ろ肯定的であった人間の方が多かったとも言える。

 だが、彼らにとってオタク文化、クールジャパンというものは、愛であり、希望であり、そして『人生』なのだ、それを否定するのは最早死ねと宣告されたも同じ。


 だからこそ彼らは力強く叫び続けた『オタクは死するとも自由は死せず』と。


 しかし政府はそれに反発するかのようにより一層規制の強化を行うばかりであり、非情にもオタクのオアシスはただの幻影へと突き進んで行く。

 そして挙句の果てに政府は活動家の自宅を強制捜査させ、発見された同人誌や漫画を没収、メディアに公開するなど、まさに公開処刑と言うべき行動へと発展していく始末。

 あまりに許されざる政府の悪行の数々に、彼らの精神は限界へと達していた――


 故に。

 この平成の焚書坑儒と闘うべく多くのオタクは立ち上がったのだった。

 自由に嫁を愛でる為にレジスタンスとなり、東京の秋葉原や大阪の日本橋を拠点に平成以降最大級の社会的運動は大きな局面へと向かっていくのであった。


 後にこの実情を見た外国人は、街頭インタビューでこう答えたという。


「オゥ、クレイジー、クール・ジャパン・ウォー」と。

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