第4話

 近づいて来る犬は小型犬だ。

 レベルによって、大きさも代わるらしい

 。

 

 ファンスドッグ

 戦闘中 

 

 犬は一匹? 周りはいないな。

 てか、犬じゃないな。ファンスドッグという名前か。

 まあいい。

 よし! やろう。

 

 杖の先を、ファンスドッグに向ける。

 

「『サンダーボール』」


 唱えると、杖先からサンダーボールが生まれて犬に放つ。

 一直線に進むサンダーボールに、ファンスドッグは躱すことができずに直撃した。

 ファンスドッグに当たると、後ろに吹き飛ぶ。

 だが、すぐに立ち上がる。

 

 やっぱり一発じゃ倒れないよね。

 

「『サンダーボール』」


 次は横に移動して躱された。

 まあ、サンダーボールは一直線にしか飛ばないから、躱すのは簡単だよね。

 ちょっと工夫しないと倒せないか。

 

 ファンスドッグが近づいて来るのを待つ。

 待ち続ける。

 攻撃してくるのを待つ。

 そして攻撃してきた所を、放つ!

 

「『サンダーボール』」


 攻撃する直前で躱すことが出来ないファンスドッグは、当たると倒れたまま動かなくなった。

 だが生きている。

 死体が消えていないのだ。

 よく見ると、身体が僅かに動いているように見える。

 

 これが麻痺か。

 動けないファンスドッグに、俺は杖で殴る。殴る。

 傍から見ると、犬を虐めている図だ。

 だが仕方がない。あれは魔物だ。

 可愛くもなんともない。犬だ。

 

 殴り続けて、ファンスドッグのHPが尽きて跡形もなく消えた。

 

〈ファンスドッグを倒しました)


 ログが表示された

 

 魔物を倒すと、その魔物のアイテムを自動的に収納される。

 なので、あとでログを見てアイテムの確認をしなければならない。

 

 

 だが、今は止しておこう。

 ここじゃあ魔物と戦う恐れがある。

 それに、今のMPじゃあ少し心配だ。

 三回もサンダーボールを使ったお蔭で。MPが半分ほどに減っている。

 

 このまま戦うのは少し不安だ。

 だが、やろう。やってやろう。

 ギリギリのピンチを楽しもう。

 盛り上がって行こう。

 けど、死んだら金やアイテムが消失するんだよな。

 

 ちょっと落ち着こう。

 このまま盛り上がったら、いつも通りの戦闘狂に成り上がっちゃう。

 悪い癖だ。良い癖でもあるんだけど。

 今回は町に戻ろう。

 

 今の戦いで何が必要か分かった。

 というか、回復アイテムを買ってない。

 大事なことを忘れていた。

 いっそのこと、今日は回復アイテムを買わずにやろうか?

 

 だから、この発想が今だめなんだよ。

 ギリギリのピンチは楽しいけど。

 まずは町に戻ろう。

 そしてまた戦おう。

 

 俺は町に戻るために歩き出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る