第52話 進む独立の道

元々の目的が、利益を得る事以上に、雇用の創出と人材の確保であった株式会社新農業は、核というコンセプトの元セカンドフェーズに入っていった。


新たに核兵器の工場を建設するなんて事をすると目立ちすぎるので、巨大なそば粉の分別工場の一角を改造し、極秘プロジェクトは動き出した。


北朝鮮の元工作員3名と白水博士が開発計画を不眠不休で担当し、10人程度、話のわかる技術者を選抜し、製造部とした。孔雪梅は、資金と物資の調達を担当する。


プルトニウム抽出の技術は、既に北朝鮮で確立していたので、それを白水博士が工作員の助言を受けながら、その頭脳で咀嚼しつつ、製造に当たる為の要件定義をしていき、あとは原料である。


「さてさて、皆さんの努力の賜物が実を結ぶのは時間の問題となっておりますが・・・問題は原料となるプルトニウムをどこで手に入れるかであります!」

孔雪梅がわざとらしく皆を集めて、切り出した。


「なんじゃ、お前がどっかから持ってくるんじゃないのか?」挑発気味に白水は言った。


「そうなんです!私がこの大事な御役目を全うしとうございまする!そして、この作戦が成功した時に、長宗我部帝国独立宣言を樹立しとうございまする!」


「というと、伊方原発か」白水が憂鬱そうに言った。


「せいかーい!北朝鮮から運んでもらうのは、やっぱりちょっと成功率が低いかな−。バレたら、ただじゃ済まされないし・・・。なので正攻法で行くことに決めました!」


「正攻法かい。つまりは、テロを起こすって事かな?」


「人聞きが悪いです!白水博士!!テロじゃなくて、平和的な引き渡しです。原発の!ここからは長期戦です。核開発施設は、目処がたったものの、プルトニウムがいつ来てもいいように、検証と実験を重ねておくのに、まだ半年ぐらいは必要では無いでしょうか?」


「中々鋭いのう。そうだ。大体それぐらいは早くともかかるだろう」


「今すぐ、原発からプルトニウムを手に入れなければならないとしたら、白水博士の言うとおり、テロを起こすしかありません!でもね。孔雪梅は、もっと平和裏にものごとをすすめたいのでおじゃりまする!」


「どうするんだ?」


「皆さんの力で、既に眠れる島、四国は目を覚ましつつありますよ!橋が落ちて、陸から孤立しました。自衛隊駐屯地は難民キャンプになりました。そして、難民らにオロオロする行政ですが、実際彼らは裏で我々のコントロール下にあります。草の根活動の長宗我部キャンペーンは、執権次郎様の活躍により、浸透してきています。特に、ニート、独り身の中年男女、非正規社員やアルバイト生活者への浸透は急速です。皮肉にも年金生活者や地主にも評価が高い。機は熟しつつあるのです!」


「で、どうするんだ?」


「時は来ました。ものごとは常に、同時多発的に進めるのが必勝!独立宣言を勝手に行い、劇場型に全国を巻き込みます。長宗我部帝国か、日本かの対立構図を鮮明にします。長宗我部帝国を選ぶものには圧倒的なメリットを、長宗我部帝国を選ばないものは、直ちに四国から撤退を促します。同時に、反原発勢力を取りまとめて、暴徒化を煽り、平和主義者達によって、原発を包囲します。」


「ああ、そういう事か。手荒くも、手堅い手かもしれんな。平和主義者ほどコントロールが容易い集団もいない。彼らは平和の為なら人殺しぐらいはやるしな」

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