ピィーヨコちゃんがゆく
パッペッポ13世(ぷっぷくぷー5064)
第1話 冒険者ピィーヨコちゃん
早朝の人々が行き交う街の防護門を一人の冒険者がくぐり通り過ぎる。
その姿は身長は成人男性の腰程つまり1メメルくらい、大きいつぶらな藍色の瞳に橙色のクチバシで黄色の羽毛を纏った鳥のような亜人であった。
胸には皮鎧を着けて、腰?に小剣を佩き、肩もない(笑)のに肩掛け鞄を掛けてちょこちょこ歩いている。
周囲の人々はだれもその存在を不思議にも思っていない。
確かに、行き交う人々の中にはトカゲ姿の人や獣の耳をつけている人、または3メメルほどの大きな人まで様々な種類の人がいるからだ。
その雑踏の中を上手にすり抜けるように冒険者が目的地へと進んでいく。
「あ、ピィーヨコちゃん!おはよっ!」
棒手振りの少女が冒険者へと朝の挨拶をしてくる。
「ぴっぴぃぷぅ!」
ピィーヨコちゃんと呼ばれた冒険者も右手?をあげて挨拶をする。冒険者はピィーヨコちゃんというらしい。
ピィーヨコちゃんに気づいた屋台の人達もそれぞれ挨拶をする。どうやら街の人々と仲良くしていることがその様子で伺える。
屋台のおやじさんから焼き鳥!を貰ったり、食堂のおばちゃんからスープを貰ったりして飲んだり食べたりしている。焼き鳥食って問題ないんだろうか。
街のみんなと楽しく話をしてから、ピィーヨコちゃんは街路を進み目的地の冒険者ギルドへと到着する。
中は早朝の為か人も疎らで………いや、何か悪そうな顔をした男達が4、5
ピィーヨコちゃんはそのまま受付に向かうとギルドの職員に話しかける。
そのギルドの職員は落ち着きがなく、仕事に不慣れな様子が見て取れる。
あっ、その子はダメなのに、ピィーヨコちゃんは気にせずに依頼の完了をその子に告げる。
「ぴぃぅぷぴぃぴぃ」
「はい!依頼の完了ですね。えええっっ、レッドブラッドベアの討伐ですかっ!?ほんとにっ!!そんなに小っちゃいのに嘘言っちゃダメですよ」
「ぴっぴぴいっぷ!」
「え?ギルドカードを見ろって?………ひ、ひゃっ、しっ失礼しましたぁ」
あーあー、冒険者の依頼内容をこんな所で大声で叫んではダメだろうに。
ほら、あいつ等が獲物を見つけたように目をギラギラさせている。
そのキルド職員は新人さんらしく忙しなく行ったり来たりしながら、手続きをしてからハキハキと受取金額をピィーヨコちゃんに言っている。
「お待たせいたしました。レッドブラッドベアの討伐で50000
ドサリと受付のテーブルに金貨の入った袋が置かれる。ザワリと後ろで声がする。あーあー。
ピィーヨコちゃんはそれを確認もせずに肩掛け鞄に入れていく。袋の方が鞄より大きいのにスポリと袋が消えてしまう。肩掛け鞄は
それを見ていれば、ある程度の力を持った冒険者であればどうにかしようなどとは思わないはずなのだが、ある意味人とはそういう生き
ピィーヨコちゃんは袋を受け取ると、依頼も見ずに冒険者ギルドをトコトコと出て行く。
「またのご利用をお待ちしております」
新人さんはお辞儀をしてピィーヨコちゃんを送り出す。彼女後でお仕置きされるな。
しばらくしてからギルドの中で屯していた男達がピィーヨコちゃんの後を追うように外へと出る。
あー、もうこいつ等が何を狙ってるのか丸分かりで、しかしピィーヨコちゃんはそれに気付きもしないでギルドを出て街の外へと出て行く。
その後を男達が少し間を空けて追跡している。3人が固まって進むのではなく、それぞれ離れながら後をつけている。かなり手馴れている感じが見受けられる。
ピィーヨコちゃんが道を逸れ雑木林がある方向へと足を向ける。この辺りは腰程の雑草が道を外れるほど生い茂っているのでピィーヨコちゃんの姿が見辛くなっていく。
それでも焦ること等欠片ほども見せず、微かな音を立てるだけでピィーヨコちゃんの後を追い続ける。
雑草の海を抜け雑木林へとたどり着くと、そのままその中を突き進んでいくピィーヨコちゃん。
男達は指信号を交わしながらピィーヨコちゃんを中心にして包囲していく。
なんかヤバ気な感じ。
やがてビィーヨコちゃんが立ち止まり、1本の木の根元でしゃがみ込む。
そして鞄から小さなシャベルを取り出し地面を掘り出す。
さくり。
その瞬間、ピィーヨコちゃんの真後ろから1本の矢が狙いすましたように襲いかかる。
しかしピィーヨコちゃんはそれを飛び上がり宙返りしながら躱し、いつのまにか手?にもった刀子――投げナイフを1本シュバンと狙いを着けずに投げる。
「ぎゃあっ!!」
男の濁った悲鳴が聞こえてくる。あんまり聞きたくはないものだ。
気付かれたと悟った男達は、手に手に得物を携えてピィーヨコちゃんの元へと飛びかかってくる。
「うぅおりゃああっ!!」
鋭く振り下ろされて片手剣はヒラリと躱され、逆に反撃を受ける。
ピィーヨコちゃんが鞄から取り出したゴツイ短剣をすれ違いざまに振りぬくと男の頸動脈を狙い違わずスワリと撫でるように切り裂く。
「げはっっ!!」
ピィーヨコちゃんが男の後ろへ通り過ぎると、傷が思い出したように切り裂かれ血が噴出す。
「っ!ちいぃぃぃっ!!」
残りの男が苦虫を潰したように声を溢しながら、ピィーヨコちゃんへと黒く塗られた短剣を左右交互に連続して斬りつけていく。
鋭い突きが次々とピィーヨコちゃんを狙い襲い来る。しかもそれぞれに繰り出さられる突きは、虚と実を混ぜあわせた危険極まりない技だった。
とても、破落戸が身に付けているような技ではなかった。
しかしピィーヨコちゃんはその一つ一つを見極め見透かしヒラリヒラリと躱していく。
「ぴぃっぷっぷっぷ」
「黙れっ!俺の生き方は俺が決めるっ!!」
ピィーヨコちゃんの呟きに眉間の皺を深くさせ更に追撃を行う男。
速度の上がった剣速にさすがに余裕が無くなったピィーヨコちゃんは、両手?に短剣を持って勢いを殺さぬように黒い剣を逸らしていく。
「な、何なんだっ!?お前はっっ!!」
思わず声を上げる男にピィーヨコちゃんは逆に剣速を上げていく。
「ぴぃいいっ!!」
「げりゃっ、ぶぶっ……っつ!!」
腕の付け根、喉、鳩尾と高速の突きを喰らい手首を切り落とされた男は血を喉に詰まらさせ絶命する。
膝をクタリと着いて仰臥する。
「ぴぃっぷ」
ピィーヨコちゃんは血のついた短剣を振り血糊を拭いしまう。
そして倒した男達の身体をゴソゴソまさぐり出す。
ま、まさかネク◯フィリア!?
いや違った。男達の装備品やアイテムを調べているようだ。
そしてジャラリとたくさんのギルドカードが出てきた。
「ぴぃい゛い゛いぃっ」
ピィーヨコちゃんは眉間にシワを寄せて辛そうに声を漏らす。
他に倒して男達にも同様に身体をまさぐり装備品を回収していく。
そして男達を一ヶ所に集めぶつぶつと何かを唱える。
「ぴぴぴぷぅうっ!」
グララと少し地面が揺れたこと思うと、男達が横たわる地面に穴が空いていき男達は穴へと吸い込まれるように落ちていった。
やがてフタをするように地面が穴を覆っていき、何もなかったかの様に地面が平らになっていった。
「ぴぷぅっ」
ピィーヨコちゃんが手の羽を1枚指のように立てると、それに応えるように手のひら程の小さな髭もじゃのおっさんが同じくサムズアップして消えて行く。
ピィーヨコちゃんは身体をパンパンと叩いてこの雑木林からてててと走り抜けてまた街へと戻っていった。
街へ入り冒険者ギルドへと舞い戻ると、先程のギルド職員さんと話し始める。
「やっぱり彼等がそうだったんですね。一時はどうなるかと思いましたが、ピィーヨコちゃんのお陰で事なきを得ました。ありがとうございます」
このギルド職員さんさっきの様子とはガラリと変わって熟練の職人さんのような雰囲気を持っている。
どうやらさっきのは演技だったらしく。動きも所作もまるで別人である。ピンと張った背筋に全てを見透かす様なその視線は見るものによっては冷たさを伴う。まさに女は女優。
ギルド職員さんの話によると、南にある辺境の冒険者ギルドの方から冒険者の姿が消えて行ってるとの事だった。
始めは依頼に失敗して死んでいったものとばかり思っていたのだが、最近になってどうやら何者かに襲われていると言う情報が入っいてきたらしい。
詳しく調べてみると、
依頼内容も危険とは全く言えない依頼が殆どだったのだ。
更に調査していると、南から北へとその傾向が出て来ているようで、今度はこの街の冒険者が襲われる恐れがあった為、囮というか罠を仕掛けることにしたという。
この街は辺境と王都の中間地点で、どちらかと言えば辺境よりのところにある。
もしこれ以上北へと異変が起きれば、下手をすると王都騎士団が出張ってくる可能性のが出て来たので、急遽
見慣れぬ冒険者らしき男達がやって来たので、当たりをつけてビィーヨコちゃんに、さもたまたま大物を狩った
彼等の目的が何であるのかは、死人に口無しで分からず仕舞いではあったがピィーヨコちゃんが受けた依頼は討伐であったので、そこまでやる義理もないし相手はそれ程の腕前だったのだ。
ピィーヨコちゃんには倒す以外なかったのだ。
もちろん、ギルド職員さんはそれを分かっててピィーヨコちゃんに頼んだ訳である。
ピィーヨコちゃんは
「ピィーヨコちゃん、これは依頼料ですから返さなくて結構ですよ」
ギルド職員さんはギルドカードを受け取った後にお金は返さなくていいと告げるが、ピィーヨコちゃんは首?を横に振りずいっと押し出す。
「ぴぃぷぷぷぅ」
「ですが」
なおも渋るギルド職員さん。そこでピィーヨコちゃんは袋から金貨を2枚取り出し鞄へとしまう。これで手締めにしようという言外の言葉であった。
ちなみに鉄貨1枚が1ドルゴ、銅貨が10、銀貨が100、金貨が1000となる。
この街で一日過ごすなら50ドルゴあれば3食食えてゆうに過ごせる金額だ。
50000ドルゴとなれば言わずもがなだ。
ピィーヨコちゃんの行動にギルド職員さんも溜め息を吐き諦める。
彼女もある意味分かっているのだ。冒険者になった家族の末路を。
偽善であっても金があれば少しだけでも救われることを。
ピィーヨコちゃんはその金を被害にあった冒険者に分配して欲しいと言ってることを。
「ほんとお人しよしですね、あなたは。分かりました、私の名にかけて必ずこのお金はこの人達の家族に渡します。それでいいですねピィーヨコちゃん」
「ぴぃぷぅぅ」
ピィーヨコちゃんは職員さんの言葉に右手?を上げて冒険者ギルドを出て行った。
「はぁ、またひと仕事ですね」
職員さんは溜め息を吐きつつも、その口元は少しばかり微笑んでいた。
ピィーヨコちゃんは冒険者ギルドを出ると、露店や出店で買い物をして、街外れの雑木林へと向かう。
ちょうと外壁の側にある大きな木の袂に立つと、側にあった上から垂れ下がる縄を手に取り引っ張るとそれに引かれるようにピィーヨコちゃんは上へと上昇していく。
上がった先には、1人暮らしには良さげなツリーハウスが建っていた。
ピィーヨコちゃんはそこの出っ張っている板にすたりと着地すると、ツリーハウスの中へと入っていく。
中に入るとピィーヨコちゃんは鞄や剣をハンガーにかけて、買ってきた料理で食事を取り、温かそうな布団へとするると入っていった。
とまり木でなく布団で寝るようだ。新事実。
「ぷぅぷぅぴぃぃ」
そう言ってピィーヨコちゃんはすやすや眠ってしまう。
今日はここまでのようである。おやすみなさいピィーヨコちゃん。
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