フィドゥキア
ブリュッケちゃんがゴールドマン教授の後ろから現れた。どこに隠れていたんだろう。空色のワンピースを着ていたので爽やかだ。透明感があり若干大人びた印象になったな。
「ハハハ、私の一番若い弟子になるのかな?」
教授が笑うと、男装の麗人ことチトマスが女々しく涙目になって主張した。
「そんな! 私が一番ではないのですか?! ゴールドマン教授~!」
ブリュッケちゃんはワンピースに似合わないライフルケースを叩いて目を輝かせた。
「中学生になったら、父のようなカルキノスハンターになるため、教授と本格的な猟に出かけるんだ」
「そうか、でも教授には気をつけた方がいい。若い女の子が大好きだからな」
「こらこら、人聞きの悪い事を言うでない。孫みたいなもんだ、わははは! 好きだけど」
ブリュッケちゃんは好奇心旺盛だな、僕の事も興味津々に尋ねてくる。
「オカダさんは、これからどうするの?」
「そうだな……植民惑星査察官として、今度はこの大陸の裏側にあるゴンドワナ大陸に渡って世直しの旅を続けようかと思っているんだ」
「だめ! ここから逃がさないわよ!」
マリオットちゃんとシュレムは姉妹で僕の腕を捕まえて放そうとしなかった。一方で何やら得意気なシュレムが僕に訊いてきた。
「どう? サプライズというより近況報告になっちゃったけど」
「最高だね! そして俺からもサプライズ……」
角膜上のナノテク・コンタクトレンズを通して、コンタクト・ドライブシステムにリンクする。指令を受け付けた衛星軌道上のインディペンデンス号からカーゴカプセルが電磁カタパルトから投下された。やがてオーミモリヤマ市の上空に白い三連パラシュートが花開いた。
「地球からケプラー22bへのプレゼントだよ。母星からの土産には、色々とイイ物が入ってるはずだぜ」
「オカダ君すごいじゃない。皆が喜ぶわ!」
ツンデレのシュレムから褒められる事なんて滅多にない。ひょっとして初めてじゃないのか? 拳を握り締めてガッツポーズした。
歓声が湧き起こった時、更に大きな声が背後から響いた。
「ようし! ずいぶん遅くなったけど革命成就パーティーだ!」
どこから集まってきたのだろうか、タッキーとキャプテンの翼を先頭に、アニマロイド達が輪になってはしゃぎ始めた。モリヤマ駅前のロータリーは、お祭り騒ぎのカーニバルめいてきた……いつの間にか元A級奴隷だったマコトとヒロミも現れて、派手な衣装でサンバカーニバルのように腰を振って踊っている。本当にどこから湧いて出てきたのだろうか、相変わらず謎めいた人達だな……。
宇宙では、いや地球でも僕は孤独だったが、たくさんの仲間に恵まれ、愛すべき人もできた。僕のケプラー22bでの賑やかな生活は、まだ始まったばかり……。
数々の問題も山積みに残されてはいるが、皆となら解決していけそうな予感がするのだ。そう、僕の太陽系外植民惑星査察官としての本格的な仕事はこれからなんだ、きっと。
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