ウルスラ
上空にはオートパイロットで飛行中の電神・秋水が爆音を響かせて旋回していた。
「おい、教授の娘さんが大変な事になってるぜ……」
「何?! デュアンがどうかしたのか!」
僕はコンタクト・ドライブシステムにより、ビワ湖の騒動がまるで手に取るように見えている。実際のカメラ映像がコンタクトレンズを通して脳内に、ほぼ実体験のように投影されているのだ。ゴールドマン教授は取り乱したのか、ぐいぐいと両手で僕の首を絞めつけてくる。折れた肋骨が痛い!
「見せろ! 彼女はどうなったんだ」
「こら! 手を放せ! 俺にしか見えないよ。止めてくれ! コントロールが乱れるじゃないか」
電神・秋水を湖面近くまで降下させる。厄介な事に、敵機と勘違いする連中が、フリーダム号の甲板から近接信管付きの対空砲火をこれでもかと浴びせてくる。
「こりゃ、容易にはデュアン総督に近寄れないぜ」
沖の方から不気味で不穏な影がゆらゆらと水底より現る。上空からしか確認できないが、20メートル以上もあるウミサソリの巨大なシルエットが、湖面まで浮上して来た。ワタリガニのように後部の脚だけをオールのように動かして泳いでいるが、全体的な形はサソリによく似ている。ハサミもあるし、名前の通り海のデカい蠍そのものだ。
「ピンチだな。溺れている上に、湖の怪物が彼女を3時のおやつにしようと狙っている!」
ゴールドマン教授は岸壁の岩に登り、ビワ湖の方に身を乗り出した。ここからは見えるはずもないのに。もし足を滑らせて下に落ちれば、大小さまざまな
「たのむ! 後生だ……彼女を助けてやってくれ、オカダ査察官! 何でもする、本当はいい娘なんだ!」
「言われなくても助けるよ。なぁ、カクさん」
「ああ! 化物のエサにしたら、バチが当たるほどの高貴な美女だ」
電神・秋水に代わって、無人水中型電神・バラクーダを遠隔操作する。電磁推進を出力最大にして向かわせた。
アクティブソナーに超巨大ウミサソリの姿が浮かび上がる。潜望鏡を湖面から出してズームするとデュアン様がブイにつかまったまま、ぐったりしているのが確認できた。体力の限界だろうか、手が外れて冷たい湖に今にも沈みそうになっていたのだ。
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