シカゴ

 二人はセカンドゲートで警備隊と合流できた。ろくな車両が揃っていない中で、スタリオン高機動車の存在感は際立っている。早速カルキノス追撃隊に編入された。

 警備隊に転向したばかりの広見巡査長が激励に顔を出した。正式装備である濃紺のプロテクター付きの完全装備に身を包んだアディーとチトマスはカッコいい。


「アディー巡査、それにチトマス巡査まで! よくここまで来てくれた……人員が少なすぎるんだ。今まで何とか努力したが、装甲殻類カルキノス3体の侵入までは防ぎきれなかった。協力して市街に出る前に仕留めよう」


「……分かったわ」

 

 チトマスは武器の調達にかかる。彼女の銃器に関する知識はゴールドマン教授からみっちりと仕込まれているので完璧だ。


「奇跡的にまだ被害者は出ていない。逆に言うと、市民の誰かが犠牲になるまで、腹をすかせたカルキノスは街から出て行かないのかも」

 

 広見巡査長がスタリオン高機動車の車載武器を調べるアディーに報告した。


「誰も犠牲になんかさせないわ……ねぇ、チトマス!」


「メインのM4カービンの5.56mm弾ではカルキノスの甲殻に対してほぼ無力ね……余程接近しないと貫通するどころか効果がなく、動きを止められない」


 スタリオン高機動車のカーゴスペースの中に、子供くらいの大きさの巨大な強化プラスチック製のガンケースがある。


「おい、チトマス。これだ、これを下から引っ張り出せ」


 カクさんの言うがままにチトマスは、一番下に積まれていた黒いガンケースを取り出して開いた。そして2分割されていた物干し竿のような銃を組み上げる。


「うわ! 何? これはひょっとして……」


 アディーは目を丸くした。チトマスは白く美しい歯を見せた。


「そう、秘蔵の50口径、アンチマテリアルライフルのバレットM82よ。どこから調達したのかは不明だけど、こいつの12.7mm弾なら奴の甲殻を貫通できるわ」


「私の細い腕には、反動が強すぎて……無理かも」


 アディーは銃の大きさに自信をなくし、出てもいない冷や汗を袖で拭いた。


「二脚があるし、伏せ撃ちなら大丈夫よ。どっちが観測員をする? 射撃の成績は私が上だったかな……」

 

 凛々しいチトマスは鼻息を荒げて本領発揮だ。

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