ハイデルベルガ
ケプラー22b総督府前の広場には、頭部や背中などを醜く腫脹させて倒れている男女が、折り重なるように転がっていた。多くの者は腫れた所が壊死したように爆発し、血まみれになっている。
そして広場には大小様々なキラーTファージが新鮮な獲物を探して、ざわざわと海辺のフナムシのように集団移動を開始していた。このままだとオーミモリヤマ市中心部の市街に向かって、数を増しながら押し寄せていくかもしれない。
「何だ、あのラムネの瓶みたいな奴は?」
僕はスタリオン高機動車の屋根に飛び乗ったカクさんに訊いてみる。
「逃げたゴールドマン教授によるとキラーTファージらしいぜ」
噂のチキン野郎、ゴールドマン教授は駐車場にて婦警二人組と一緒に奮闘していた。
「きゃー! きゃあ! キャー!」
チトマスは箒を振り回してキラーTファージを追っ払い、アディーは拳銃をぶっ放している。
「落ち着け、チトマス! うろたえるな、アディー! 頭部を破壊して、複製を作り出すのを阻止するんだ」
ゴールドマン教授は、杖で手際よくキラーTファージの頭部をガラス瓶を割るように壊している。だが、その感染力は凄まじく犠牲者が増えるにつれ、いくら破壊し続けても追い付かなくなってきた。教授は息が切れて、体力の限界に近付いているのが見える。護衛を任せていたランドルトは、どこへ行ったのだろう。肝心な時にいなくなるなんて。
「オカダ君、何とかして! ケガ人を助けてあげないと」
シュレムが、べそをかきながら悲痛な声を上げる。看護師の彼女は、犠牲者の何人かに知り合いがいるようだ。以前に患者として世話した人も含まれているのかもしれない。
「デュアン総督め。あんな古い非人道的兵器を隠し持っていたのか。地球にはもうないぜ」
「いいから! 皆を早く助けてあげて! ……あなたならできるでしょ!」
「ピンチの時、頼りになるのが男なんだぜ」
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