ロザリア

「シルマー! 大丈夫か!」


 ザイデル部隊長の悲痛な叫びが響き渡る。だがチェーンを頭部にまともに食らった彼は鼻血を出しながら大地に沈んだままだ。


「誰が悪魔だって? 化物呼ばわりしやがって、ふざけるな! この野郎!」


 ブエルムは倒れたシルマーからセミオートの散弾銃フランキ・スパス15を奪うと残った左腕のチェーンも吹き飛ばした。


「さて、はははは! やっと解放されたぜ! 女隊長さんよ」


 ブエルムはシルマーを助け起こそうとするザイデル部隊長に向かって、チェーンを引きずりながら近寄っていく。手にはショットガンを持ったままだ。

 両眼を涙で潤ませたザイデルは、薄笑いのブエルムを睨み付けながら叫ぶ。


「貴様! 上官に手を掛けるとは……軍法会議で今すぐ処刑してやる」


「処刑? この俺を殺すってのか! 面白い! お願いします、隊長殿!」


 銃を背に回したブエルムは、シルマーの脇にへたり込んだザイデル部隊長の白い襟を両手で掴むと、ぐいと引っ張り無理矢理に立たせた。


「何をする! 無礼者め! この私が誰だか分かっているのか!」


「分かっていますとも! 高慢ちきなザイデルD-15部隊の隊長、ザイデル様なんでしょう?!」


 ブエルムはザイデルのシャツを力任せに左右に引き裂いた。ネクタイは解け、全てのボタンが飛んで上半身が裸となった。


「ぐぐ……!」


 ザイデルは黒い下着だけの姿となったが軍人のプライドで、娘のような悲鳴は上げなかった。


「ひひひ! あれぇ? 叫ばないのかな?! つまんねえな! ならこれでどうだ!」


 更に太い指がザイデルのアンダーウェアに襲いかかり、そのまま斜め上方に引き千切られた。

 大きくて形のよい乳房が弾んで露わとなったが、ザイデルは身じろぎもしない。ブエルムをきつく睨みつけたままだ。その時、大きな銃声が多数響いた。


「貴様! 隊長にそれ以上の狼藉を働くと今すぐここで殺す! 早く武器を取り、いずこの敵と戦ってこい!」


 周囲のアマゾネス達が一斉にブエルムに対して銃を向けた。ザイデルも胸を隠しながら腰の護身用H&K USPを抜いて構える。


「……チッ! 分かってらぁ! お楽しみはこれからだっての!」


 周囲をチラリと確認したブエルムは長髪の乱れを直した。そして両腕のチェーンを振り回しながら、ひらりとその場から立ち去り、あっという間に血生臭い戦場の方へと姿を消したのだ。


 

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