ウニタス

 高みの見物をするランドルトが歓声を上げた。


「やりやがった。ザイデルD-15部隊が撤退を始めたぜ。さすがにあの大軍勢の前には、ひとたまりもないようだな」


 彼が言う通り、陣取っていた物資搬入エレベーター後方よりザイデルD-15部隊は抵抗を続けながらも、じりじりと退却を余儀なくされている。


 B級奴隷の戦闘員は勢いに乗っていた。冥界の番人に祝福されるかのごとく、死をも恐れぬ力を発揮しているのだ。今までの隷属心の裏返しなのだろうか、アマゾネスを次々と打ち倒すと、支配の象徴ともいえる総督府を蹂躙し、ザイデルD-15部隊を追い詰めてゆく。


「妙だな、精鋭揃いのはずなのに死に物狂いの抵抗が見られないし、あきらめての投降もないようだ。部隊には重砲や戦闘車両もないのか?」


 僕はコンタクト・ドライブシステム上でインディペンデンス号からの偵察映像と熱線映像を確認する。

 一方ゴールドマン教授は、指揮系統にばらまいている携帯端末に情報を送っているが、先ほどのEMP電磁パルス爆弾で大半は故障して使用不能の状態だ。教授は古い双眼鏡を覗きながら呻いた。


「いかん、深追いするな戻ってこい」


「俺もそう思う。これは明らかに罠だ」


「これはザイデルD-15部隊が得意とする戦法“釣り野伏せ”に違いない」


「古典的で有名な戦法だな。つまり撤退するように見せかけて……」


 革命軍は総督府側面にあるKR線搬入口までザイデルD-15部隊を追撃してきた。200人ぐらいの部隊に対し10倍近くの戦力差があるように見える。幾つものレールが敷かれている貨物搬入口の端にまでザイデルD-15部隊が追い詰められた時、B級奴隷の革命軍は誰もが勝利を確信したのだ。

 

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