ゴードニア

 その時、にわかに鬨の声が上がりB級奴隷の革命軍による総攻撃が始まった。ザイデルD-15部隊が電神・秋水の飛来に、少しひるんだ隙を見逃さなかったのである。

 先ほどまで怯えていたはずのランドルト弟は呑気な台詞を言い放った。


「さてさて、ザイデルD-15部隊か。どんなお手前か見物だぜ」


 僕とスケさんは勢いだけの革命軍を心配した。


「B級奴隷の戦闘員は指揮系統が全く確立していない。つまり効果的に動いていないし、広い視野で状況判断もできていない。崩れると早いぜ」


「ええ、それに比べ正規軍はさすがね。誰がどこでどう戦えばいいのか、よく理解しているし、集団なのにまるで一つの生命体のように動いて統制が取れているわ。数だけではザイデルD-15部隊に勝てないかも」


 革命軍は焼け落ちる総督府を完全に包囲し占領すべく、ザイデルD-15部隊の赤い隊旗が翻る陣地に向かって集団でなだれ込んで行った。小川がいつしか大河となるように、オーミモリヤマ市周辺のB級奴隷を巻き込んで大軍勢となった革命軍は、まるでお祭り騒ぎのように雄叫びを上げながら老いも若きも粗末な武器を携えて駆け抜ける。

 

「あ~、こりゃ相当ストレスがたまっていたんだな。見ろよオカダさん、あの嬉しそうな顔を」


「確かに。抑圧からの解放ってところだな。皆装備がバラバラで丸腰に近いが……数だけで押し切れるかどうか」


 僕とランドルトの会話にゴールドマン教授は『楽観的過ぎる』と割って入った。さっきから萎縮して無言状態だったから存在を忘れていたよ。


「甘い! 甘いぞ、オカダ査察官。ザイデルD-15部隊は今までに、圧倒的に優勢な敵を相手に何度も勝利を収めてきている」


「そういえば銃声は激しいが、本格的に重火器を撃ち込んでこないぜ」


 しばらくザイデルD-15部隊は持ちこたえていたが、革命軍の大群を前に隊旗を畳むと総督府広場の反対側に向かって徐々に後退を始めた。



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