ファエトゥーサ

 ケプラー22b総督府から多数の人間が避難し内部は、ほぼ無人状態になったようだ。屋上の火災なんて、消し止めようにも方法がない。

 僕はスタリオンの屋根に仁王立ちになると、狙撃される危険も顧みず叫んだ。


「刮目せよ! ケプラー22bの市民達よ。支配体制が終焉し崩壊する時がきたようだぜ!」


「天を仰ぎ見よ……トール・サンダー!」


 衛星軌道上を飛翔するインディペンデンス号の機首の副砲に光が灯った。トール・サンダー自由電子レーザーが地表の目標物に向かって徐々に集束されていったのだ。

 ケプラー22b総督府は、台形ピラミッド部より上層を宇宙空間からのレーザー照射に晒された。上階部分は、熱を帯び変色すると瞬間的に大爆発を起こし四散する。そのまま重力に抗いきれず、巨大な建造物は火災を起こしながら、大音響を上げてみるみると瓦解し始めたのだ。

 車内のシュレムは、両腕の中にマリオットちゃんとブリュッケちゃんを抱きながら唖然とした。

 

「目の前で起きている事が信じられない。あのオーミモリヤマ市の象徴でもあったケプラー22b総督府が……」


 天井ハッチから戦々恐々と外部を覗くランドルトも土埃を浴びながら言った。


「これは現実なのか? この惑星のコロニー都市を支配するデュアン総督の居城が崩れてくぜ」


 僕はEMP電磁パルス爆弾のせいで若干調子の悪くなったナノテク・コンタクトレンズを車内の新品に交換しながら言う。


「フフフ……よく見ておけよ! インディペンデンス号の主砲による艦砲射撃じゃなかっただけに手加減したと思え」


 スケさんは黒髪の間から耳をそばだてると、オーミモリヤマ市の駅方面からなだれ込む一大勢力の中にゴールドマン教授の姿を見出したのだ。


「オカダ君、そこから見える? 向こうからゴールドマン教授が担がれて、ここまでやってくるわよ」


  

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