イクレア
『貴重な地球製の宇宙船に対してそこまでやるかね……まあ脅威は早めに排除しておくのが定石だけど。主砲の管制は手伝うよ。反動の姿勢制御と弾道計算はフルオートで』
カクさんは半ばあきれたようだが、派手な展開に彼らしくノリノリの状態になってきた。
『ゴールドマン教授が腰を抜かすぜ。ズヴェズダ号を退役させるのは早すぎるってな』
『俺はもう迷わない。デュアン総督にひと泡吹かせてやる。』
レーザープラズマ加速器へのエネルギー供給がピークに達した。
『フリゲート級に匹敵する主砲を舐めるなよ! 今だ! ファイアー!』
インディぺンデンス号の中心軸に装備された2門のレーザーガイドビーム砲の右舷の砲門が開いた。絶対的な無音世界の宇宙空間で一筋のほうき星のような閃光がズヴェズダ号の艦底をかすめる。その瞬間、熱と衝撃でズヴェズダ号は光り輝き、外郭を溶かすとバランスを失ったように回転しながら何もない外宇宙空間に向かって進行方向を曲げたのだ。
剥離した無数の破片がキラキラと恒星の光を反射し、その一部は大気圏との摩擦で燃え尽き流星群となった。
『カウンター・スラスター正常作動。よし、オカダ君、ズヴェズダ号は名前の通り、お星様になったぜ』
僕は公衆トイレから出ると伸びをして、インディペンデンス号のコントロールをカクさんに譲る。
一仕事終えた後は清々しい疲労感に包まれ、見上げた空には幾筋もの光跡が走っているのを確認できた。
ミニパトの二人の所へと戻ると『トイレ、混んでたのですか?』と真顔で訊かれた。彼女らの様子から、どうも皮肉ではないようだ。
「いやあ、色々たまっていたので、凄いのを放ったら流れていったよ。後始末はカクさんで」
「……? ハハハ……」
アディーもチトマスも苦笑いするしかなかった。
「あっ綺麗な流れ星!」
チトマスは上空を見上げながら、アディーに天体ショーを告げるのだった。
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