アマリア

 チトマスも今言うべきかどうか躊躇した後、覚悟を決めて真実を伝えてきた。


「マリオットちゃんも鹿命館中学校の授業中に、クラスメート全員の目の前でデュアン総督の私兵に無理矢理、連れて行かれたそうです。先生も手出しできないはずですし、すごいショックだったでしょうね。彼女の心中を考えると胸が痛みます。ましてや小学生のブリュッケちゃんも同じ目に会っていると考えると……オーミモリヤマ小学校は突然の暴挙に、幼い児童が泣き出してパニック状態だったらしいです」


「チトマス! もういい! それ以上言うな! 止めてくれ……」


 僕は胸が張り裂けそうになって大声で怒鳴った。歯ぎしりをして汗まみれのシャツを破れんばかりに捩じり上げると、背中から猛烈な怒りによる身震いのようなものが湧き起こる。全身の毛穴という毛穴が総収縮し、鳥肌が立つと髪の毛が逆立つのが感じられた。


「ぐうううう……すまない、本当にすまない。ブリュッケちゃん、マリオットちゃん、それにシュレム。俺と関わったばかりに、俺と仲良くしたばかりに、優しかったばかりに……」


 ついにシャツが破れてガチガチにこわばった筋肉が露わになる。


「俺の大切な人達についに手を出したな! 許さん! 今度ばかりは絶対に許さねえ! デュアン総督!」


 感情が荒ぶり、どうしようもなく涙が溢れ出してきて、ナノテク・コンタクトレンズが両眼から流出しそうになる。コンタクト・ドライブシステムへの接続エラー表示が瞼の裏側辺りに赤いアイコンで表示され、アラートが脳内に響き渡った。


「アディー、……チトマス」


『はい、何でしょうか?』


 ただならぬ雰囲気の僕を目の当たりにして、恐れをなした二人は互いに抱き合って震えている。


「今すぐ俺を逮捕してくれないか」


「……え?」


 唐突な僕の台詞の意図する事が飲み込めず、婦警二人組は顔を見合わせて、きょとんとするばかりだった。




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