アリーネ

 アディーは屈託のない笑顔で言う。


「噂は常日頃から耳にしてますよ。地道にレジスタンス活動をしているようで……」


 やっぱ憎めないよな、この人は。素直でいい娘だと思う。


「そうなんだよ、参ったなぁ。今やスケさんとカクさんとも離れ、ナノテク・コンタクトも取り上げられ、身ぐるみ剥がされて裸同然。言わばコンタクト・ペーパードライバーだ。奴隷解放を訴える啓蒙活動のビラ配りぐらいしか有効な手段がないと言っていい」


「ぷぷっ……警官の私を信用して色々とペラペラしゃべってもいいんですか?」


「本当に大した事はしていないんだ。武装蜂起すると必ずやアマゾネスに死傷者が出る結果となるだろうから、軽はずみな事はできないのが現状だ。せっかく増えてきた植民惑星の人口を減らす事は、査察官として本末転倒だからね」


 マリオットちゃんがポン、と手の平をグーで叩いて言った。


「ああ、それで大人しくB級奴隷をやってるんだ。何でスケさんとカクさんとで大暴れしないのか不思議に思ってたんだ」


「やろうと思えば、いつだってやれるさ。だが今は自らB級奴隷の実体験をして、この惑星の人々の生活や文化や思想を肌身に感じて勉強している最中なんだよ」


 二人の様子を見ながら、クッキーを齧って紅茶をストレートでいただく。地球の物とほぼ同じ味だ。



「ここを開けて下さい! オカダさん!」


 突如ドアがノックされ、外から女性の大声がした。僕は思わず口に含んだ紅茶をマリオットちゃんに向けて噴射した……が瞬時に、お盆でうまくガードしたのだ。やるな! そういえばここに長居はできないんだっけ。


「今日は何だか、お客さんが多く訪ねてくる日ね」


 マリオットちゃんがドアを開けると婦警の姿をした凛々しいチトマスが立っていた。彼女は僕の協力者として先陣を切って動いているのだ。でも、どうやってオートロックを通過してきたのだろう。まあ、たまたま帰ってきた住人と一緒に入ってきただけなのかも。

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