アスケラ

 僕は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、二人を前にして無理に笑った。


「最近やっと、この惑星で友人がたくさんできたんだ。時間がある時に紹介できると思う。悪いけど今日は急いでいるので、これで失礼させてもらうよ。またいつかゆっくり話し合おう」


「あら、もう行っちゃうの~?」


 マコトが残念そうな顔をした。ヒロミも会話に割って入ったのだ。


「今度オーミモリヤマ市で会いましょうね」


「ああ……」


 ずぶ濡れのフレネルが、恨み言を呪文のように繰り返しながら地上まで戻ってきた。警備会社と社員の女に尻を押されて、やっとの思いで堀池からよじ登ってきたようだ。

 これ以上の長居は無用! マコトとヒロミに別れを告げると、カクさんと一緒にスタリオン高機動車に飛び乗った。そう言えばランドルト弟はどこに行ったんだろう、と言いかけた時……。


「おい、俺も助けてくれよ」


 彼は勝手に後部ドアを開いて座席に乗り込んでくると、くしゃみをした。まだブリーフ姿だったんだ。


「いいぜ。君の姉さんの所に連れて行ってやるよ。その前に服を着なきゃな」


「姉っ?!」


 マコトとヒロミは、ヒラヒラの服を風に揺らめかせながら、我々に手を振って見送ってくれた。さようなら……あの二人組ならパークス商会ともうまく渡り合える事だろう。

 スタリオンを急発進させると、ランドルト弟は舌を噛んで悶絶する。

 

「いでで……またオカダ査察官に借りを作ったな。本当に感謝するよ。あやうくC級奴隷にされるところだった」


 そして僕の着替えの白ツナギ服をカクさんに出してもらった。そのまま彼に服を渡しながらカクさんは訊いた。


「どういった、いきさつなのか説明しろよ」


 あれからランドルト弟はビルショウスキーに許しを請い、我々を追っかけてオーミモリヤマ市を目指したらしい。途中で双子の姉がいるオーミハチマン市に立ち寄ったのだが、彼は脱走兵ゆえに、この街ではお尋ね者。そこで有力者のパークスの所を頼ったのが運の尽き……まんまと騙されて営業所地下に監禁されたという訳だ。



 

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