イストリア
「皆ちょっと! スケさんを見て!」
マリオットが、にわかに叫んだ。
何だと思って見ると、スケさんは両方の目から涙を二筋、確かに流している。
お前、ひょっとして、まさか……。
「オカダ君、私は……所詮作り物のアニマロイドだけど、ようやく人の心を手に入れたわ。だって皆と別れるのが辛くって悲しくって、ゴミも入ってないのに、こんなにも熱い涙がコントロールできずに溢れ出してくるんだもの」
「スケさん、ついにやったな」
「ありがとう、オカダ君。今まで一緒に宇宙を、
「必ずパワーアップして復活させてやる。そのお節介機能も改良してやるからな……」
「いや、このまま……元のままでいいよ」
シュレムとマリオットはそう言いながら涙を拭う。埃にまみれた顔が白くなるまでに泣いたのだ。アディーとブリュッケちゃんはスケさんの体をいたわるように、いつまでも撫でた。
「スケさん! 絶対に修理してやるから!」
カクさんも叫んだ。
「俺のパーツを使ってもいいからさ……姉御」
スリーピングモードに入った彼女から、返事はもう返ってこなかった。
一同は夜の闇のような沈黙に支配されるがままだ。車内は重苦しい空気に包まれ、どこからともなく鼻腔に流れこんだ涙を啜る音が聞こえてくる。
スタリオン高機動車の外はいつ止むとも知れない雨。
電神ヴィマナが飛行する高空は、蒼く澄み渡る空だというのに……。
荒ぶる化物が巣食っていたオアシスには残酷な静寂の凪が訪れ、旅の出立を遅らせるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます