ブリュンヒルト

「え? ボクをカルキノス退治に連れて行ってくれるの? あなたの噂は聞いてますとも。地球人のパーティに入れるなんて光栄だな」


 亡くなったヒコヤンは、男の中でも数少ないS級奴隷だったらしい。基本的に男は所持禁止の銃器類の使用許可を持っていたし、個人財産の所有も認められていた。これはヒコヤンの能力が特別に優れていた事実を示す。ブリュッケちゃんは、父親が残した僅かばかりの財産をやり繰りして、貧しい生活に耐えているとのこと。 

 ひょっとしてデュアン総督が僕に約束した“女と同等の権利”ってのはS級奴隷にしてやるって事なのかな? ラスボスの考えそうな事だ。


 ブリュッケちゃんは母親とも幼い頃に死に分かれているので、天涯孤独の身らしい。まだ小学生なのに苦労しているんだな。このオーミヒコネ市で、まっとうに生活できているって事は相当なしっかり者なんだろう。澄んだ大きな瞳は少しブルーの色が入っており、まるで宝石のよう。クラスの委員長をしているらしく聡明そうな感じがした。

 

「知り合いによると学校は今、夏休み中なんだろ? 期間限定で雇う事にするよ」


 僕はマリオットちゃんから学校情報を得ていた。


「わあ! 装甲殻類カルキノスハンターとしての初仕事だ。父はハンターになる事を反対して、一度もボクを仕事に連れて行きませんでしたが……毎日ねだってカルキノスの話は聞いていましたよ。あこがれの仕事だったのです!」


 ブリュッケちゃんは、旅の支度をしてくると言い残して、再び部屋に戻っていった。

 嬉しそうな彼女の後姿を見て、カクさんが言う。


「いいのかい? 危険な旅にあんな子を連れて行っても」


「確かに、ちょっと軽率かもしれない。彼女の父親になったつもりで全力で守ってやるよ。カクさんも協力してくれるだろ?」


「ああ、カルキノスの知識と情報は必要だしな……」


 

 ブリュッケちゃんは、なぜか女の子らしい服に着替えてきた。肩こそ出してはいなかったが、膝上丈の白いワンピースだ。自分の持っている一番イイ服にしてきたらしい。その上に多数のポケット付きのベストを羽織る予定。頭には父親の形見である赤いヘルメットが……。

 しかも武器として自分の身長の2/3に達するほどのマークスマンライフル……H&KG3SG/1のスコープ付きを持ってきた。腰には、くの字に曲がったグルカナイフまで装備しているので、ガーリー系ファッションが台無しになっていた。


「さあ、行きましょう、オカダさん。 助けてもらったお礼に、どこまでも付いて行きますよ」


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