クリメネ
「分厚い靴と、靴下のおかげで大したことなさそうよ。臭い足だね、足に触れた冷凍食品は、あなたが全部食べてね」
シュレムは赤くなった足の甲に軟膏を塗ると、足の臭いで食欲をなくしたみたいな事を口にした。
「あんまりだ。……ひ、ひどすぎる」
僕は、ハンカチを口の端に咥えて破れんばかりに歯と手で垂直に綱引きをした。
「……ま、まあエビフライができたから食べてみて」
アディーが困り顔で、自分が揚げたフライの皿を持ってくる。僕はキャンプ用の机の上に乗せられた料理に、唖然として目が釘付けになった。クッキングシートが広げられたプラスチック製の大皿の上には、黒焦げになった悲惨な物体が山盛りになっているのだ。
「あの~、何ですか? これは……」
震える指でアディーに問いただす。
「何って、ケプラー名物のエビフライよ! タルタルソースで召し上がれ」
エプロン姿のアディーは笑顔で料理を僕に勧めてくる。だが、やはりどう見ても大量の炭にしか見えない。
「これって、ひょっとすると失敗して焦がしてしまったんじゃ……」
僕が言い終わる前にシュレムとマリオットが口を挟んだ。
「特にオーミモリヤマ市では、エビを黒く焦がすまで揚げてからいただくのよ」
姉妹はニコニコしながら、エビフライを僕の口の中にフォークで次々と押し込んでくる。途端に炭素系の苦い味が口中に広がるのを感じた。インスタントコーヒーの粉と鉛筆の芯をミックスした物を歯でバリバリと噛み潰しているような気分だ。
刹那に嘔吐中枢が刺激され、口中に充満した黒く油っぽい物体を両手にぶちまけたくなったが、目の前には笑顔で様子を伺う三人の娘達の顔が並んでいた。
ここで無様に粗相をすると、彼女達に対して失礼になるかもしれない。いや、地球人は根性なしとアマゾネス達を失望させるはずだ。僕は極めて涼しい顔で黒色流動体を嚥下すると、水筒の水をがぶ飲みした。そしてまだ皿の上に残っているエビフライ炭に手を伸ばす。
アディーは何だか嬉しそう。……ヴぉえ!
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