イアンテ
「オカダ君、
スケさんは屋根から跳び降りて巨大ガニを威嚇する。銀色に輝くボディの化物は、口から泡を吹きながらハサミを振るう。
僕はスタックした高機動車の後輪前にジュラルミン製の板を敷いて、ぬかるみからの脱出を図る。
「カクさん、合図したら右後輪に70パーセントの力をかけてくれ!」
「了解した。 右後輪モーター制御」
タイヤが板に乗り上げて、見事に駆動力を取り戻した。
「オカダ君! ディフェンスが!」
横ばいで走るケプラースベスベマンジュウガニは予想以上に俊敏だ。スケさんの反復攻撃をかわす、かわす。
「この野郎! これでも喰らえ!」
僕はスベスベしていない甲羅の裏面を狙ってトリガーを引いた。だが一歩遅かった。巨大ガニの一撃が僕の首元を狙う。
「なんの!」
スケさんが隙を見てケプラースベスベマンジュウガ二の背に跳び乗った。だが自慢の爪が、つるつるの甲羅に全く引っかからず、滑って地面に落っこちてしまった。まるで磨かれた丸い大理石の上に乗っかったようなものだ。
巨大ガニは文字通り泡を食ったが、すぐに僕の方に向き直った。こいつ、下等生物のくせに中々トリッキーな攻撃を仕掛けてくるじゃないか!
僕がぬかるみに足を取られたのを見計らって、巨大ガニの重いハサミが振り上げられる。
今度攻撃を受けたら、銃身がもつ保証はどこにもない。うまくかわすか、それとも受け流すか……。
その時、邪悪なカニの爪が頭上において、鈍い衝撃と破片を伴って砕け散った。
「オカダ君! 今のうちに逃げて!」
シュレムが危険を顧みず高機動車から降り立ち、開けたドアに据えたM4カービンで援護射撃してくれたのだ。
「ありがとう、シュレム!」
僕は化物が怯んでいる間に走って撤退した。 カクさんがスタリオン高機動車のドアを開き、待機してくれていたので転がり込む。
「オカダ君、大丈夫なの?」
マリオットちゃんの心配そうな声を聞いたら何だか安心したよ。
スケさんが屋根に乗った事を確認すると、全速力でその場を後にした。すごすごと巨大ガニが悔しそうに湖に戻って行くのが、ミラー越しにうかがえたのだ。
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