シズビー

 僕はスタリオン高機動車の運転席に座ると、オーミモリヤマ市の外部にあるビワ湖を目指して出発させた。


「おーい! 待ってくれ、置いてかないでくれよ~」


 カクさんが街中の道路を必死に走って車を追いかけてくる。僕をおちょくった罰だ。しばらく外で頭を冷やしてくるがよい。


「カクさん、走るの結構早~い。がんばってねー!」


 マリオットちゃんが窓から手を振ってカクさんを応援する。


「信号よ、赤になれ―!」


 カクさんが念じると、本当に赤信号となって停車した。


「チャンス、ジャーンプ!」


 鈍い音が車の天井から響いた。奴め、追い付いたな。でも車内には当分入れてやんない。

 上から苦しげな小さな声が聞こえてきた。


「……オカダ君、秋色ブラジャーはどこ?」


「やかましい! 具体的にどんな色なんじゃ、そのブラは!」




「それにしてもシュレム、いつでもどこでも看護師の白衣のままなんだ。車内でも着替えないのか」


「私にとって白衣が一番動きやすい戦闘服と言えるの」


「そうですか……」

 

 毎日こんな服で本当に大丈夫なんだろうか。職業を示す服を着ることが義務付けられているって聞いたけど、僕にはもう何も言えなかった。

 そういえば妹のマリオットも、赤いリボン付きシャツにブレザー、グレーのスカート、黒ソックスに革靴と通学に着ていく学生服のままだ。開拓移民であるこの惑星の女の子は、もっと言うとオーミモリヤマ市のアマゾネス達は着替えの服をあまり持っていないのか、そう勘繰ってしまう。


「何よ、失礼ね。私達の服のセンスと種類が足りないとでも?」


「いや、そこまでは言ってないよ」


「いつかプライベートの服も見せたげるわ。ただし、もっと仲良くなってからだけど……ね~、マリオット」


「うん。私の私服、可愛いよ! たぶん地球の女の子に負けないぐらい」

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