エウロパ

 もはや植民惑星査察団で唯一の良心と常識を備えたメンバーとなったスケさんは、シュレムに色々とフォローを入れてくれた。


「ごめんね、オカダ査察官は長期宇宙飛行による疲労と、奴隷扱いされた精神的ショックからまだ完全に立ち直っていないの。大目に見てあげてね」


 それを聞いたシュレムは、自分にも責任の一端があることを知り、非常に申し訳ない気持ちで一杯になったようだ。


「こちらこそ、そんな事情があるとは思いもしませんでした。普段から看護師として患者様……人に対する精神的なケアを心がけているつもりでしたが……まだまだですネ」


 シュレムはスケさんに敬語を使い始めた。さすが100年モノのアニマロイドだ、経験値と説得力がズバ抜けている。



 一方僕らはまだ、第三者から見ると意味不明のテレパシー漫才を続けていた。


『シュレムちゃんがダメなら妹のマリオットちゃんを狙え。彼女なら若い分、更にハードルが低いはず』


「カクさん! 何でマリオットが妹だって知っているんだ」


『フッ! 俺様のおなごに関する情報収集能力を甘く見てもらっては困る。彼女は鹿命館中学校2年生で現在14歳。料理研究部員のはずだ』


「ひええ~! 若すぎるだろ」


 妹のマリオットの名前を聞いたのか、シュレムが敏感に反応した。


「ちょっと! 妹のマリオットがどうしたって言うのよ!」


 シュレムに首根っこを掴まれ、やっと我に返る。


「はっ! ここはどこ? 私は誰?」


「ごまかされるかー!」


 妹思いのシュレムは、マリオットの事になると本気になる。僕は地球人ではなくB級奴隷にするのと同じ剣幕で怒られた。 


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