最終章 異星界アラフォー戦記
カンパニア
最終章 異星界アラフォー戦記
「トール……サンダーァァァ!」
その夜、隣のコロニー都市の境界線になっているセタ川のカラ橋が、衛星軌道上のインディペンデンス号による自由電子レーザー攻撃を浴びた。古い鉄橋は光に包まれると、灼熱化し完全破壊されて川の水面へとバラバラに落下した。
革命に混乱するオーミモリヤマ市を、あわよくば占領せんとするオーミオオツ・クサツ連合軍がラング市長の命を受け総督府に向けて侵攻してきたのだ。当然オーミモリヤマ市立陸戦隊を始めとする我々の活躍により、あっという間に撃退されたのは言うまでもない。これ以降、大規模な戦闘は起こらず内戦は鎮静化した。
ケプラー22bの奴隷解放革命は成就し、デュアン総督による支配体制はここに終わりを告げたのだった。オーミモリヤマ市のケプラー22b総督府は現在機能を停止し、主は身柄を拘束されている。
キラーTファージに刺されたデュアン総督のお尻は、完熟したトマトみたいに腫れあがり、歩く事さえままならない状態だ。アニマロイド軍団・キャプテンの翼が、キラーTファージのプログラムを書き換えて、アンチ・ウィルス・タブレットを飲んだ人間を逆に襲うように設定しておいたのだ。ついでにナノマシンの増殖を抑えるように配慮はしたらしい。……おかげで彼女は死なずに済んだのだ。
デュアンは総督の地位を解任され、植民惑星ケプラー22b、オーミモリヤマ市における全ての権限を剥奪された。
本日革命軍が総督府に詳細情報調査のため入城し、支配体制の正式な移譲手続きに入る。
肩を落としたデュアンが、総督府前広場に見せしめのように連れ出された。少し憔悴したが顔色は悪くない。衆目に晒された後、車で護送される彼女を見付けるなり、ゴールドマン教授は肩を叩いて叱咤激励した。
「デュアンよ、お前はまだ若い。本日を以って自由の身となったのだ。自分の好きなように生き、自由に結婚して幸せな家庭を築きたまえ」
「貴様は奴隷長のゴールドマン……貴様から憐れみの目で見られる筋合いはない。今に見ていろ、私はこのままでは終わらない」
デュアンの目は、まだ死んでいなかった。その怒りの炎で白い地味な服が燃え上がりそうだ。
「そうだ、その意気だ……」
教授は、にっこり微笑んで彼女を見送った。まだ自分が本当の父親だという事は告白していない。彼女の功績を認めようとする教授の計らいで、デュアンもいつしか一般市民として自由な身となるのだろう。プライドの高い彼女は、その屈辱とも惨めとも思える現実に耐えられるのだろうか。
……もう少し時間が必要だ。いつか二人、親子水入らずで語りあえる日が来るかもしれない。
新総督には、現オーミモリヤマ市長のミューラーが代わりに就任する予定だ。男性皆奴隷制度はここに廃止され、ついに男女同権がケプラー22bに実現される事となる。
革命の主導的立場であったゴールドマン教授を、この惑星のトップに就任させる提案もあった。というのも解放された奴隷と女性市民から大いに推薦されたのだ。だが結局の所、高齢を理由に固辞されたと聞く。
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