第9章 城塞都市

カサンドラ

  第九章 城塞都市


 朝になり皆を起こしに回った。荒野の朝は冷え込む。

 空気が澄んでいるので、はるか遠方まで見渡せる。ビワ湖の対岸だろうか、浸食された岩に霧がかった灌木。何か独特の朝の匂いがする。


「お風呂に入りたいな」

 

 朝食を済ませた女性陣は貴重な水を使って顔を洗い、メイクまでしているみたいだ。こんな所でも!

 昨日キャンプ地で色々あったが、アマゾネス達はぐっすりと眠れたのだろうか。


「まだ入ってくるなよぉ」

 

 車内で新しい制服に着替えている模様。旅行でもないのに何だってんだ。


「さあ、出発しましょう」


「野宿は腰が痛いし、疲れが取れないなあ」

 

 看護師さんと婦警さんが不満げに何やら話してる。車内はテントと比べて安全で、比較的快適だったはずなのに。

 全ての準備が整った。高機動車は今日も快調に北を目指す。


「オカダさん、昨日は一緒に寝れなくて残念だったね」


 アディーが冗談っぽく僕に言うと、カクさんは不満げだった。


「俺が真面目に見張りに出向いている時に、一体何やってんだよ」


「いやいや、中々スリリングだったぜ」


 シュレムが一瞬はっとした。


「ちょっと、私が寝ている間に何かあったの?」


 後席のマリオットちゃんに問い詰めると、彼女はしぶしぶ話し始めた。


「我慢できなくなって、お外で……」


「あ、それ、私もです!」


 アディーは言わなくてもいい事を、いたずらっぽく付け加えた。


「その後、オカダさんを誘って、寒さしのぎに私のベッドに入ってもらおうと思ったのですが、ダメでしたね。もちろん冗談ですよ」


 シュレムの顔色が瞬時に変わった。


「つまり、私が寝ている時にオカダ君がやってきたと。寝顔を見られた! それはちょっと、イヤだ! 恥ずかしい……」


 見られたのは寝顔だけじゃないんだが。

 結局マリオットちゃんが全部ばらした。シュレムは、みるみると耳まで顔を真っ赤にしたかと思うと、両手で頭を抱えるのだった。


「見られちゃったよ。えーと、昨日はいていたのは……」


 ブルーですよ! と答えたかったが、さわやかな風景の話題をふってごまかした。


「オカダ君!」


「ハイ、何でしょう?」


「お風呂に入りたい」


「へ? 朝に風呂ですか?」


「私のを見た罰として、オーミヒコネ市に寄り道してお風呂に入らせて!」

 

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