熱帯

わずか数週後には、彼らは松明号を携え、境界帯の全く反対の淵に立っていた。"暑い方向"から帰ってきた者は太古の昔より皆無である。今度こそ、新天地が見つかるに違いない。

暑い方向へ進む方法として、"とびはね"は煉瓦を積む方法を考案した。煉瓦は《赤さ》の強烈な輻射を遮り陰を作る。この陰の部分の地殻から煉瓦を作り、更に先へ進むという寸法である。

続いて"のんびり"が、行く先に連続して陰を作り、道のように辿る方法を見つけた。煉瓦の壁の手前側と奥側に傾斜をつけて山なりにすれば、円形煉瓦を転がしながら先へと押し出せる。送り出した円形煉瓦が溜まればやがて陰が繋がり、道ができるのである。

最後に"はやくち"が地殻掘りの最適条件を見出した。昔からあることわざのように、地殻がまだ熱いうちは比較的柔らかく、掘りやすかったのだ。"はやくち"は寒い方向で得た植物を加工し、熱い地殻に直接触れないで済む道具の製作までやってのけた。


遅々としつつも、彼らは着実に暑い方向へ進んでいった。すると数十週ののち、前方に不思議な光景が現れた。見たこともない奇妙な物体が、群れをなして屹立していたのだった。

それらは、《赤さ》に向けて頭を持ち上げ、目一杯身体を広げていた。根元は頂点より遥かに細く、傘に隠れた地殻は触腕で触れるほどに冷えていた。そして……寒い方向の植物がそうであったように……これらもまた息づき、体液を持ち、食料とすることができたのである!

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