第二十六章 領地を管理して冒険者を支援します
第413話 不吉な報告
子供といっても、農村から出てくる際には一応、大人扱いされている15歳程度の子をターゲットにする。
まずは少人数から受け入れて、問題点があったら改善しようということで数日は手配に明け暮れた。
そうして日々を忙しくしていると、領地に調査に行っていたクラウディオ達が戻ってきた。
「その・・・ご報告があります」
心なしか、目を伏せて話を濁すクラウディオの姿に、嫌な予感を覚えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「このままでは飢饉になります」
それがクラウディオの報告だった。
クラウディオ達は、まず領地に赴いて様々な調査を行った。
最初の内は現在の代官を刺激しかねない税金や帳簿の財務調査は控えめにして、主に農村の作付状況から調査することにしたそうだ。
それに余計に課されている税金の状況などは、農民から直接に話を聞いていれば幾らでも入ってくる。
「これが、農民から聞き取った課されている税金の一覧です」
と羊皮紙にビッシリと書かれた一覧表を見て、俺は目を疑った。
(カッコ内は著者の補足)
・人頭税:(人の人数に関して課される)
・死亡税:(死んだら課される)
・相続税:(田畑や家を相続したら課される)
・結婚許可税:(結婚をする際に課される)
・橋の通行税:(村内の橋を通ると課される)
・家屋建築税:(新しく家を立てると課される)
・竈使用税:(家の中に竈を持っていると課される。共同竈を使っても課される)
・農機具使用税:(農機具を領主から借りると課される)
・土地税:(田畑を持っていると課される)
・賦役:(命令される労働)
・粉挽き小屋使用税:(小麦を挽く施設、水車小屋などを使用すると課される)
・売上税:(商売をすると売上に対して課される)
・・・
・・
まだまだ税の一覧表は続いていたが、思わず顔を上げてクラウディオに確認した。
「これは事実なのか?いや事実なのだろうが、正気か?」
代官には領地の経営のために一定の課税権がある。
それに怪物の襲撃から村全体を守るため周囲の柵などを築くよう村人を賦役として動員する権利もある。
だが、それにしても常軌を逸した課税状況だ。
「財務・・・帳簿は確認できていないのだよな。農民の暮らしはどうだった」
「収穫した作物のうち、7割~8割ほどが取り上げられるようです」
「それで、よく暮らしていけるな」
「土地柄は豊かでしたから」
でした。と過去形で言っているのが気になる。
「今年は何かあったように聞こえるが」
「そうですね。ある畑で小麦が黒くなる病気が流行り、領地の収穫が落ちているのです」
「なんだと!それで、今の代官は対応したのか」
「いいえ。そもそも代官は村に滅多に来ませんから。それで教会と村長で相談し、その畑を焼き払ったそうです」
代官として任命されながら、土地に赴かない代官もいる。まあ、俺もそうなりそうな気配だが。
それにしても酷い。
「だがまあ、それで病気は治まったのでは?」
「その畑に関しては麦の病気は治まりましたが、収穫を保証して再分配する仕組みがありません」
「それこそ、教会や代官の仕事じゃないか。そういう非常時のための徴税じゃないか。村に共同倉庫があるだろう」
「共同倉庫は空でした」
「・・・なに?」
「代官の手で何処かに運び去られていたようです。このままでは、畑を焼いた村人は飢え死にします」
クラウディオの報告は、不吉な予言めいていた。
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