第29話 伝説の男
団長室は、応接セットの奥にあった。
ドアを開けると、そこには10年強で冒険者のトップに駆け上がった
伝説(ジルボア)がいた。
「ケンジだったね。話はスイベリーから聞いてるよ。」
柔らかそうな金髪。整った顔立ち。30を過ぎている筈だが、
随分と若く見える男だ。
華奢ではないが、世間でイメージされる冒険者のゴツくて
ムサい印象が全くない。
まるで貴族のようだ、と心の中で呟く。
その時、俺は団員達が不安になる気持ちがわかった。
こんな、お話の英雄のような人間が、いつまでも俺たちと一緒の場所
にいてくれる筈がない、と。
「ああ。いろいろと話は聞かせてもらったよ。
団がギクシャクしてる原因もわかったように思う。
だから、最後にジルボア(あんた)にも確認したかったんだ。」
スイベリーは目を見開いて俺を見た。
ジルボアは面白そうに尋ねる。
「何がわかったんだい?」
俺は、ゆっくりと言葉を区切って応える。
「あんた達、剣牙の兵団が強くなりすぎたことが原因だ、
ってことがわかったのさ。
あんたにだって、わかってたんだろ?」
ジルボアは薄く笑った。
「なかなかやるね、ケンジ。スイベリー、お前は面白い奴を
連れて来たな。」
とりあえず、相手の関心を引くことには成功した。
さて、ここからが営業(プレゼン)の本番だ。
必ず伝説の男を唸らせて見せる。
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