第13話 駆け出しの支援は足下から

不具者をなんとかする。

 

俺の決意を聞いたサラは、おずおずと切り出した。


「ええと・・・、それって教会に寄付するってこと?」


教会は不具者や貧民に炊き出しをしたり、療養所を開いて怪我人を治療したりもしている。


ある程度富裕になった者や顔役は、収入から一定割合を教会に寄付するのが、この世界の慣習のようなものだ。

 

だから、サラの質問は自然な感想だろう。


だが、俺の意見は違う。


「なんで、あんな司祭(ぶた)に寄付しなきゃいけないんだ。」


教会は教会台帳を管理して、教区の出産や結婚、葬式を管理している。

 

冒険者は、その管理から外れる者たちだ。

だから、必然的に仲が悪い。


俺も冒険者だった頃には、いろいろと嫌な思いをした。

俺の目が黒いうちは、教会に寄付なぞあり得ない。


それに、寄付したところで大半は司祭(ぶた)の衣装(みえ)や献金(わいろ)に消えるのだ。

善行に使われるのは、献金の5%もあれば、いいところだろう。


「俺が考えてるのは、予防だよ。怪我しなきゃいいんだ。」


「そりゃあそうだけど・・・ひょっとして、防具の売買に手を出すの?やめたほうがいいよ・・・。」


サラの心配は、もっともである。

防具製造は、鍛冶ギルドと皮革ギルドの双方に強いコネクションを持つ一大利権だ。


それに、防具の管理は軍事にも強く関係している。


俺のような根無し草が、勝手に防具製造や売買に手を出せば、タダでは済まない。

 

「わかってる。防具なんぞには、手を出さないよ。俺が手を出すのは、これだよ。」


そう言って、足元を指さした。

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