第12話 新しい商売の理由

その日も宿の一角を占領して、ツアー案内の合間に書き物をしているとサラが入ってきた。


「はーい、予約票持ってきたよ!って何それ!魔法書!?」


「いや、案内者の記録台帳と覚書(メモ)。」


「はー・・・何十枚あんの、それ?羊皮紙って高いんでしょ?」


確かに、その日暮らしの冒険者に羊皮紙は無用の長物だろう。

大抵のことは覚えておけばいいし、識字率が低いせいもあるだろうがこの世界の連中は驚くほど記憶力はいい。


「まあ、植物紙に比べたらそこまででもない。癖でね。気になるから集計してたんだ。」


「何が気になるの?」


「まあ、いろいろだよ。

 1日に何人の冒険者を案内したのか。

  案内した冒険者のうち、無事に帰ってきた連中が何人か。

  無事に帰ってきた連中で、もう一度サービスを利用したのが何人か・・・」


「何でそんなこと気にするの?」


「そりゃあ、今の商売の満足度を測るためと、

 あとは新しい商売を考えるためだな。」


「新しい商売?こんなに流行ってるのに?」    


サラは目を見開いて驚きの声をあげた。


普通に考えたらそうだろうな。


「あのな、俺が気になるのはここだ。無事に帰ってこなかった連中のことだ。

 こいつらはどうなると思う?

  

大半はかすり傷だ。

  

 だが、大きな傷を負ったり、手当てが悪くて手足を切り落とす奴らも多い。そうして、一生を不具者として生きるんだ。

  

 俺は、こいつらを何とかしてやりたい。」


サラは意外なもの見るような眼で俺を見つめていた。

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